CCS

CO2地下貯留ポテンシャル評価

化石燃料の利用などによって発生した二酸化炭素(CO2)を地中に圧入し地球温暖化の抑制に貢献する技術として、CO2地下貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)があります。
効率よくCO2を圧入するためには、砂岩など流体を通しやすく圧入しやすい岩相と、圧入したCO2が再び地表へ漏出してしまわないように泥岩など緻密で流体が通りにくい岩相が適切に分布している必要があります。これらの組み合わせは、石油・天然ガスの胚胎条件と類似した部分も多くあります。そのため、適切な圧入地の選定には当社が石油・天然ガスの探鉱・開発事業で培ってきた地質・物理探査技術を応用することができます。
当社では、適切な圧入地選定のために国内外で評価を実施しています。その中で、特にCO2の圧入対象となる砂岩層と圧入したCO2の保持ができる泥岩層の分布に着目し、対象地の地質や地史の変遷を適切に理解し、それぞれの岩相の時空的分布に基づく圧入ポテンシャルの評価に取り組んでいます。これらの評価には圧入の可否だけでなく、圧入後に地表へ漏出しないことなどの安全性の面も含まれています。CO2の発生源として注目されがちな化石燃料の生産を担う当社として、持続可能な地球温暖化の抑制に貢献すべくCO2貯留技術の向上も目指しています。

DAS技術開発

坑内に埋め込んだ光ファイバーを地震計の代わりとして使用し、地震波を計測するDistributed Acoustic Sensing (以下、DAS)が、地震観測や地震探査の費用削減をもたらす可能性があるとして注目を集めています。DASは光ファイバーそのものをセンサーとして扱うことにより物理現象を観察するDistributed fiber optic sensing(以下、DFOS)技術の一つです。石油業界ではDFOS技術を掘削オペレーション、地下構造評価、生産・圧力モニタリングに適用することができるとされています。とりわけ、DASは光ファイバーが坑内に常設されていることから、地震探査のたびに受振器設置や測線展開を行う必要がなく、一度の設置で十数年規模での長期間モニタリングが可能になるという長所があります。

当社では、2016年から二酸化炭素地下貯留や二酸化炭素の地下圧入による原油回収効果最大化の評価・検証に向けて、DASによる地震探査および地下モニタリングに必要な技術開発を進めてきました。2017年には世界でも報告例のなかったコイルドチュービング内に敷設した光ファーバーによるVSP(Vertical Seismic Profile)探査を実施し(小林ほか, 2018)、また収録データの処理技術開発を進めてきました(Kobayashi et al., 2019)。現在は、DASを用いた坑井間地震探査やVSP探査の精度向上に向けて、国内外の大学や研究機関と技術開発に取り組んでいます。

参考文献

小林佑輝・成瀬涼平・薛自求, 2018, 坑井内に展開した光ファイバーを用いての地震観測の可能性について‐本邦初のDAS計測で観測された自然地震を例として‐,56-70
Kobayashi, Y., Uematsu, Y., Mochiji, S. and Xue, Z., 2019. A field experiment of walkaway distributed acoustic sensing vertical seismic profile in a deep and deviated onshore well in Japan using a fibre optic cable deployed inside coiled tubing.