CO2地下貯留技術

既存石油開発技術で培ってきた技術を基礎として、CCSの中でもCO2を地下に圧入および貯留する技術に焦点をあて、CCS事業の推進に必要な技術基盤の整備を進めています。研究開発のテーマは以下に大別されます。

  • 安定貯留
  • 貯留効率向上
  • 長期貯留挙動予測

安定貯留

モニタリング技術

安全にCCS事業を運営するためにはCO2を安定に貯留することが不可欠です。そのために地下および地上から圧入CO2の挙動を常にモニタリングすることが必須となります。現在提案されているモニタリング手法は多岐にわたっており、例えば、2020年にIEAが発行したレポートでは、40以上のモニタリング手法に関する評価・比較が報告されています。これらの手法の有効性評価も含めて、最適なモニタリング技術の研究・開発を推進していきます。

貯留効率向上

地質特性

地下に圧入したCO2の挙動は、地下に存在する地層の特性に強く影響されます。そのため、CO2を安定的、かつ、より効率的に貯留する上で地層の特徴を理解することが重要となります。地下の地層の特徴は坑井の掘削によって得られた岩石試料や坑内計測データ、弾性波探査などのリモートセンシング技術によって取得されたデータなどから推測できるほか、地上に露出する地層の調査を通じても類推することもできます。当社ではこれらの手法を組み合わせて、地下の地層がどのような特徴をもち、地層の特性がCO2の地下貯留の安定性や貯留効率にどのような影響を与えるかについて研究を行っています。

地上に露出する地層の例(アメリカユタ州Book Cliff)

長期貯留挙動予測

CO2挙動予測の高精度化

CCS事業を計画するうえではCO2圧入中だけでなく、CO2圧入終了後の長期間にわたってCO2が地下に貯留されることを評価する必要があり、CO2の拡がりや相変化についてシミュレーションを通じた解析を行います。地下に圧入されたCO2は地層水との間に存在する密度差・濃度勾配・熱力学的非平衡に起因し、圧入停止後に長い時間をかけて移動・拡散・溶解します。また、地層水に溶解したCO2は岩石と化学反応を起こし、岩石鉱物を溶解し貯留層やシール層性状を変化させることも、あるいは、圧入CO2が鉱物化し岩石に固定化されることも知られています。このようにCO2地下貯留における長期挙動予測では、石油や天然ガス開発のための数値シミュレーションでは取り扱うことの少ない複雑な挙動を考慮する必要があり、これら一連の現象を高精度に再現・予測するための検討を行っています。

図 地下に圧入されたCO2挙動
図 CO2対流現象の数値シミュレーション(CO2濃度分布)