DXの取り組み

DXビジョン

デジタル技術は、以前から石油・ガス業界に幅広く活用され、当社の事業もその恩恵にあずかってきました。近年は、最先端のデジタル技術により、さらに高度で高速な処理が可能になり、多様かつ大量のデータを活用した取組ができるようになっています。
INPEXは、我が国及び世界のエネルギー需要に応えつつ、2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けたエネルギー構造の変革に積極的に取り組んでいますが、デジタル技術の活用はそうした取り組みの重要な柱と位置づけています。
INPEX Vision@2022長期戦略では「デジタル技術を活用し、生産・供給体制及びステークホルダーに新たな付加価値を創造・提供するデジタルエネルギー会社の基礎を作る」というDXビジョンを掲げています。
このビジョンに沿って、当社に於けるDXの役割を「外部環境の変化に対処すべく、デジタルによる組織・社員・文化・マインドセットの社内革新を促し、業務高度化を主導する。先端デジタルテクノロジーを駆使して高度なビジネスプロセスを確立し、新しい価値を創造することで、競争優位性の構築を目指す。」というように定義しています。

DX戦略

DX戦略は、中期経営計画・技術戦略に基づき、操業をデジタル化することにより、石油・天然ガス分野の強靭化・クリーン化に貢献し、生産性向上や省力化を実現することを目指しています。また基盤整備に向けた取り組みの中で、デジタルデータ基盤を整備し、デジタル技術の活用を加速させることで、効率化を図り、新たな価値創造を実現する方針を立てています。DX戦略は以下の5項目を重点的に取り組んでいます。

  1. 1.事業効率化・自動化:複合デジタル技術により、事業の省人化・無人化及び操業・技術・管理業務の徹底的な効率化を推進する
  2. 2.技術高度化:社内外データの有効活用・分析により、技術面での高度化を図る。
  3. 3.脱炭素分野への転嫁:石油ガスE&Pに於けるデジタル技術を脱炭素分野(CCUS、水素・アンモニア、再エネ、メタネーションなど)に展開し、同分野の効率化・高度化を図る。
  4. 4.データ管理・分析、基盤強化:技術データ基盤・技術スタディツールを整備し、技術業務を効果的に支える。
  5. 5.デジタル人材育成:全社のデジタル力を強化し、社内の変革・業務高度化を促す。

DX推進体制

DX関連の取組みをけん引すべく、DX推進リーダーを任命するとともに、技術本部にDXを専門的に取り組むDXグループを設置し、これが当社のDXに関する施策を統括しています。
また事業部や国内外拠点を含む組織横断型のタスクフォースが分野・テーマごとに組成され、具体的デジタル施策の企画・立案や知見共有のプラットフォームとしての機能を担っています。
個々のデジタル案件は、担当事業本部やDXグループ等から組成されるプロジェクトチームが実行主体となって推進しています。

デジタル人材育成

デジタル人材育成は重要な取り組みの一つであり、デジタル人材に求める知識や能力を定義し、実践的な研修プログラムを通じ、新たな企業価値や顧客体験を創出するデジタル人材の育成を目指しています。
当社では、デジタル人材に求められる2つのスキルを定義し、基礎と専門のレベル別に研修プログラムを実施しています。

  1. 1.DX案件を企画・推進する人材
  2. 2.高度データ活用・管理・分析をする人材

全社員のデジタルリテラシーの底上げを目的として、基礎レベルのプログラミング講座を実施し、全社向けポータルによるデジタル施策に関する情報発信を行っています。また、専門人材の育成を目的として、専門レベルのデータサイエンス講座を実施しています。今後も、全社的なデジタルリテラシー教育、プログラミング講座やデータサイエンティスト講座等の研修を継続して実施する予定です。

DX取組み事例

  • 省人化・無人化、ロボット
  • 最適メンテナンススケジューリングツールSPOT
  • 当社では石油・天然ガスの地質・物探分野でも機械学習・AIなどデジタル技術活用を積極的に進めています。リンクはこちら

省人化・無人化、ロボット

安全の確保、さらには生産・操業の競争力の維持・向上を目指し、当社既存生産施設に於いて複数のDX施策を総合的に実施する試みに取り組んでいます。以下の主要3つのコンセプトを掲げ、全面的な展開に先立ち、スモールスケールのパイロットプロジェクトを2022年春から推進しています。

コンセプト

統合オペレーションセンター:コラボセンターやAI監視等支援で複数プラントの統合監視
スマートファシリティ:現場作業の自動化レベル向上、多様センシングでのセンターとの情報連携
プラントデジタル基盤:各種通信を実現し、業務プロセスを支える連携複数システム基盤

無人化・省人化DX(国内2030)コンセプト

フィージビリティスタディのフェーズでは、運転制御領域において現状の設備と運転の各種分析を行い、効果的な自動化手法やロボット適用の検討をするとともに、運転・設備・安全管理領域での迅速な意思決定や業務効率向上につなげるための、業務プロセスと情報活用の分析を行い、組織および業務改善とDX施策遂行計画を立案しています。

最適メンテナンススケジューリングツールSPOT

当社イクシスプロジェクトの生産・操業で活用されているスケジューリングおよび計画最適化ツール(SPOT)は、メンテナンス作業管理データを有効活用することで、オペレーションリスクの低減を考慮しながらメンテナンス計画を最適化するツールです。SPOTはデータサイエンスとデータ分析の手法を適用し、作業管理プロセスと人員、必要機器の納入時期、施設内の現在の制約等を考慮しながら、最適化された施設のメンテナンス計画をほぼ自動で立案します。

クラウドデータプラットフォーム

技術データ基盤AI-landによる探鉱開発ビッグデータ管理

技術データ基盤AI-land(アイランド)は、技術データをINPEXクラウド上で管理するシステムで、2021年より運用しています。AI-landの中核は、地震探査データ(データ量1ペタバイト)や坑井データ(データ量4テラバイト)などの地下データを収集して保存するGIS(Geographic Information System)です。

ネットゼロカーボン社会の実現を目指す社会情勢は、石油ガス会社にとってさらなる事業拡大のための新たな課題を生む一方で、新たな機会を創出しました。こうした中、AI-landの坑井や地震探査のマップやデータは、CCSやCO2排出源データのマップと重ね合わせて地理空間で可視化することにより、ネットゼロカーボンの取り組みにつながる新たなシナジーの創出に貢献しています。
データガバナンスの強化は、デジタルプラットフォームの強固な基盤を構築するための重要な課題でした。データ管理手順は、データが属人的に個別に管理されないように変更する必要がありました。技術データ管理の原則とプロセスを定義し、全社共通のルールでデータ管理を一元化することで、高いレベルのセキュリティとアクセシビリティを実現し、データ品質を維持することが容易になりました。
当社でも2020年からリモートワークが本格開始されましたが、AI-landはクラウド技術を活用して、従業員が自宅から技術データにアクセスするための安全で簡素な方法を提供しています。