株式会社INPEX
広報・IRユニット
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株式会社 INPEX(以下「当社」)は、当社が実施しております「ブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験」(以下「本実証試験」)において、本日7月12日に地上プラント設備の起工式を実施し、建設工事に着手いたしましたので、お知らせいたします。
本実証試験は、利用時にCO2を発生しないクリーンなエネルギーである水素・アンモニアを、その製造から利用まで一貫して実施する、国内初のプロジェクトです。
原料となるガスは新潟県内で当社が操業する南長岡ガス田からの国産天然ガスを利用します。また、製造の際に副次的に発生するCO2は、既にガス生産を終了した東柏崎ガス田平井地区の貯留層へ圧入(CCUS)し、大気への排出量を抑えます。このようにして製造した水素はブルー水素(注1)と呼ばれ、本実証試験で製造したブルー水素は水素発電設備を通して新潟県内に電力として供給いたします。また、一部ブルー水素からブルーアンモニア(注1)を製造し、新潟県内の需要家様への供給を目指しております。
当社は本実証試験を通して国産天然ガスからのクリーンなエネルギーの製造を実現し、日本のエネルギーセキュリティーに貢献してまいります。
また、本実証試験の後はその成果を活用し、新潟県において、当社天然ガス田及び既存インフラを活用したブルー水素製造プラントを建設し、2030年頃までに商業化を目指します。
加えて、国内のみでなく海外においても、本実証試験の経験を活用したブルー水素・アンモニア及びCCS/CCUSプロジェクトの事業化検討を進めてまいります。
今回、建設工事に着手した地上プラント設備は、年間700トン規模の水素製造設備、水素製造時に発生するCO2の分離・回収設備、CO2の地下圧入設備、アンモニア製造・貯蔵・出荷設備等から構成されておりますが、そのいずれにも、脱炭素社会を牽引していく先進的な技術を採用しています。
水素製造設備には、Air Liquide Global E&C Solutions社のATR(Autothermal Reforming)の技術を採用します。ATRは天然ガスの部分酸化反応による発熱を、吸熱反応である水蒸気改質反応に利用する、外部からの熱供給を必要としない改質方式であり、水素製造時のCO2排出箇所を高CO2分圧のプロセスガスに限定することができ、CO2の分離に必要なエネルギーを削減可能です。
CO2の分離・回収設備には、高圧でCO2を回収することでCO2の圧入時の昇圧動力を削減可能にする日揮グローバル株式会社/BASF社のHiPACTプロセスを採用します。
アンモニア製造設備においては、独自の触媒を採用する事によって低温・低圧でアンモニアを合成することを可能にしたつばめBHB株式会社の技術を採用します。
これら設備に係る設計・機材調達・建設工事(EPC)・試運転役務は、アンモニア製造設備を第一実業株式会社が、水素製造設備・CO2の分離・回収設備・地下への圧入設備・その他設備を日揮株式会社が実施いたします。
これまで先行工事として造成工事を行ってきましたが、2023年6月から地上プラント設備の準備工事を開始し、2023年7月以降地上プラント設備の本工事を開始、2025年3月に試運転を開始、2025年8月での完工を目指しております。当該地上プラントの建設にあたっては、安全や環境に十分に配慮して行う所存です。
なお、本実証試験のうち、水素・アンモニアの製造およびCO2回収については、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)から、「燃料アンモニア利用・生産技術開発/ブルーアンモニア製造に係る技術開発」として採択された助成事業のもとで実施いたします。
また、CO2の地中貯留の実施と評価については、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 (以下「JOGMEC」)と共同研究「天然ガス利用等における低炭素化を目的とした国内枯渇油ガス田を活用したCO2貯留可能量把握に関する実証試験」として実施してまいります。
当社は、2022年2月9日に「長期戦略と中期経営計画 INPEX Vision@2022」を発表しており、その中で「水素・アンモニア」及び「CCS/CCUS」分野の目標として、2030 年頃までに 3 件以上 の事業化を実現し、年間 10 万トン以上の水素・アンモニアの生産・供給を目指し、CCS/CCUS分野では2030年ごろにCO2圧入量年間250万トン以上の達成を掲げています。
本実証事業はそれらの目標の達成のための重要な取り組みとなり、建設工事の着手は、本実証事業の成功に向けた、重要なマイルストーンとなります。
(注1)
化石燃料をベースとしてつくられた水素のうち、その製造工程で排出されたCO2を回収して貯留したり利用したりする「CCS (Carbon Capture and Storage)」「CCUS (Carbon Capture, Utilization and Storage)」技術と組み合わせることで、CO2排出をおさえた水素を「ブルー水素」といいます。また、その「ブルー水素」を原料にして製造されたアンモニアを「ブルーアンモニア」といいます。
【参考】
1.水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験の概要について
体制 |
・水素・アンモニアの製造およびCO2回収について:NEDO の助成事業として採択 ・国内枯渇油ガス田を活用したCO₂貯留可能量把握について:JOGMECとの共同研究実施 |
期間 |
2022 年度~2025 年度末 (延長可能性あり) |
場所 |
INPEX 東柏崎ガス田平井地区 |
概要 |
1) ブルー水素の製造実証と、それを利用したクリーンな電力の供給 2) 近年開発された低温低圧の合成プロセスを利用したアンモニアの製造 3) 国内枯渇油ガス田を対象としたCO2貯留可能量の評価・検証 4) 圧入CO2による炭化水素増進回収効果(Enhanced Gas Recovery, EGR)の確認 5) 圧入CO2の挙動を監視するための各種モニタリング |
- 2.実証試験イメージ (うち、赤枠内が今回建設する地上プラント設備)
3.完成予想図
4.プラント設備建設工事実行体制
以上