決算レビュー(日本基準)

2024年2月13日現在

1.経営成績等の概況

当連結会計年度より、会計方針の変更を行っており、前連結会計年度との比較分析にあたっては、遡及適用後の数値を用いております。

また、当連結会計年度より、報告セグメントの変更を行っており、前連結会計年度との比較分析にあたっては、一部の販売数量及び平均価格につき集計方法の見直しが反映された後の数値を用いております。

(1)当期の経営成績の概況

当期における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から緩やかに回復しました。雇用・所得環境が改善する下で、さらなる回復が続くことが期待されております。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また、物価上昇、ロシア・ウクライナ情勢及びイスラエル・パレスチナ紛争、金融資本市場の変動等の影響は引き続き懸念されております。

当社グループの業績に大きな影響を及ぼす国際原油価格は、代表的指標の一つであるブレント原油(期近物終値ベース)で当期は1バレル当たり82.10米ドルから始まり、1月は中国のゼロコロナ政策の終了による原油需要の回復への期待等を背景に原油価格は続伸しました。その後は、春先にかけて米欧の複数の金融機関の経営難が世界経済を下押しするリスク懸念から概ね70~75米ドル程度で推移しましたが、原油価格は上昇トレンドを描き、9月後半には一時的に95米ドル超の値をつけました。10月に入るとイスラエル・パレスチナ紛争を背景に原油価格が一時的に乱高下する不安定な局面もありました。12月のOPEC+の会合にて、産油国による原油生産目標の引き下げ(減産強化)が見送られた結果、当該減産規模に関する不透明感が市場で強まったこと等から原油価格は軟調に推移し、年度末で77.04米ドルとなりました。これらを反映して、当期における当社グループの原油の平均販売価格は、前期に比べ、1バレル当たり14.88米ドル下落し、82.83米ドルとなりました。

一方、業績に重要な影響を与えるもう一つの要因である為替相場ですが、当期は1米ドル131円台で始まりました。年前半は、日銀による政策修正観測の高まりから日米金利差の縮小が意識され、一時127円台まで円高が進みましたが、日銀の政策金利据置の決定や好調な米経済指標の影響を受けて米ドルが買われ、ほぼ一貫して円安が進行しました。年後半は米国のインフレ鈍化観測や日銀金融政策の是正観測により、一時138円台まで米ドル安が進行しましたが、その後は堅調な米国経済指標や日銀による金融緩和の長期化観測を踏まえ再び円安が進行し11月には151円台後半まで値を上げました。期末にかけては米連邦準備理事会(FRB)による利下げ示唆や米経済指標の下振れなどを受けやや円高が進行し、期末公示仲値(TTM)は前期末から9円12銭円安の141円82銭となりました。なお、当社グループ売上の期中平均レートは、前期に比べ、8円87銭円安の1米ドル140円62銭となりました。

当社の当期連結業績につきましては、原油の販売価格の下落により、売上高は前期比1,589億円、6.8%減の2兆1,657億円となりました。このうち、原油売上高は前期比1,694億円、9.5%減の1兆6,092億円、天然ガス売上高は前期比106億円、2.0%増の5,357億円です。当期の販売数量は、原油が前期比92千バレル、0.1%減の138,024千バレルとなり、天然ガスは前期比37,398百万立方フィート、8.5%増の479,814百万立方フィートとなりました。このうち、海外天然ガスは前期比36,825百万立方フィート、10.5%増の387,974百万立方フィート、国内天然ガスは前期比16百万立方メートル、0.6%増の2,452百万立方メートル、立方フィート換算では91,502百万立方フィートです。販売価格は、海外原油売上の平均価格が1バレル当たり82.83米ドルとなり、前期比14.88米ドル、15.2%下落、海外天然ガス売上の平均価格は千立方フィート当たり5.62米ドルとなり、前期比1.27米ドル、18.4%下落、また、国内天然ガスの平均価格は立方メートル当たり90円08銭となり、前期比8円10銭、9.9%上昇しております。売上高の平均為替レートは1米ドル140円62銭となり、前期比8円87銭、6.7%の円安となりました。

売上高の減少額1,589億円を要因別に分析しますと、販売数量の増加により366億円の増収、平均単価の下落により3,200億円の減収、売上の平均為替レートが円安となったことにより1,245億円の増収、その他の売上高が1億円の減収となりました。

一方、売上原価は前期比494億円、5.2%減の8,939億円、探鉱費は前期比122億円、42.0%増の414億円、販売費及び一般管理費は前期比28億円、2.7%増の1,084億円です。以上の結果、営業利益は前期比1,245億円、10.0%減の1兆1,218億円となりました。

営業外収益は前期比246億円、7.3%減の3,110億円、営業外費用は金融資産の条件変更等から生じる損失の剥落等により、前期比576億円、41.1%減の824億円となりました。以上の結果、経常利益は前期比915億円、6.3%減の1兆3,504億円となりました。

特別損失は、豪州での環境規制強化等を含む外部環境の変化等に伴い一部プロジェクトで減損損失を計上したことにより890億円となりました。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額は前期比714億円、7.5%減の8,800億円、非支配株主に帰属する当期純利益は98億円となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比895億円、19.4%減の3,715億円となりました。


セグメント別の業績は次のとおりであります。 

なお、当連結会計年度より、セグメント利益及び報告セグメントを変更しており、前連結会計年度との比較分析にあたっては、変更後のセグメント利益及び報告セグメントに基づく数値を用いております。


① 国内石油・天然ガス事業(国内O&G)
ガス価の上昇により、売上高は前期比182億円、8.5%増の2,328億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比61億円、17.2%増の419億円となりました。  


② 海外石油・天然ガス事業(海外O&G)- イクシスプロジェクト
 販売数量の増加により、売上高は前期比46億円、1.3%増の3,731億円となりましたが、金融資産の条件変更等から生じる損失の剥落等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比97億円、3.3%増の3,026億円となりました。


③ 海外石油・天然ガス事業(海外O&G)- その他のプロジェクト
 油価の下落により、売上高は前期比1,923億円、11.2%減の1兆5,295億円となりましたが、減損損失の増加等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比747億円、63.2%減の435億円となりました。


(2)当期の財政状態の概況

当連結会計年度末における総資産は6兆5,231億円となり、前連結会計年度末の6兆2,598億円と比較して2,633億円の増加となりました。このうち、流動資産は8,182億円で、有価証券の増加等により前連結会計年度末と比較して888億円の増加となりました。固定資産は5兆7,049億円で、投資その他の資産の増加等により前連結会計年度末と比較して1,744億円の増加となりました。  

一方、負債は2兆1,040億円となり、前連結会計年度末の2兆2,374億円と比較して1,334億円の減少となりまし た。このうち、流動負債は5,658億円で、前連結会計年度末と比較して390億円の増加、固定負債は1兆5,381億円 で、前連結会計年度末と比較して1,725億円の減少となりました。 

純資産は4兆4,191億円となり、前連結会計年度末の4兆223億円と比較して3,968億円の増加となりました。このうち、株主資本は3兆983億円で、前連結会計年度末と比較して1,900億円の増加となりました。その他の包括利益累計額は1兆409億円で、前連結会計年度末と比較して1,884億円の増加、非支配株主持分は2,798億円で、前連結会計年度末と比較して183億円の増加となりました。


(3)当期のキャッシュ・フローの概況

当連結会計年度の連結キャッシュ・フローは、原油の販売価格の下落による税金等調整前当期純利益の減少や非資金項目である金融資産の条件変更等から生じる利益の計上があったものの、売上債権の減少や非資金項目である持分法による投資損益の減少等により、営業活動の結果得られた資金は前期比350億円増加の7,863億円となりました。投資活動の結果使用した資金は、有価証券の取得による支出が増加したものの、有価証券の売却及び償還による収入の計上や長期貸付けによる支出の減少等により前期比2,012億円減少の3,243億円となりました。財務活動の結果使用した資金は、長期借入金の返済による支出の増加等により前期比2,384億円増加の4,803億円となりました。現金及び現金同等物に係る換算差額は75億円のプラスとなり、これを加えた結果、当期中に減少した資金は107億円となりました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、期首の2,116億円に当期中に減少した資金107億円を差し引いた2,008億円となりました。


(4)今後の見通し

通期 2024年12月期(予想)
売上収益(億円) 19,310
営業利益(億円) 10,100
税引前利益(億円) 10,430
親会社の所有者に帰属する当期利益(億円) 3,300

当社グループは、2023年12月期の有価証券報告書における連結財務諸表から、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)を任意適用することとしております。このため、2024年12月期の連結業績予想はIFRSに基づき作成しております。

なお、上記見通しは、原油価格(ブレント原油)を、1バレル当たり第1四半期平均で78米ドル、第2四半期平均で73米ドル、第3四半期平均で73米ドル、第4四半期平均で68米ドル、通期平均で73米ドル、為替レートを、年度を通じて1米ドル138円として算出しております。


(5)利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当

2022年2月に公表しました「長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision @2022)」でお示しした還元方針においては、2022年度から2024年度の中期経営計画期間中は、総還元性向40%以上を目途とし、1株当たりの年間配当金の下限を30円に設定するなど、安定的な配当を基本としつつ、事業環境、財務体質、経営状況等を踏まえた自己株式取得を含む、業績の成長に応じた株主還元の強化に取り組むことを基本方針としております。  

また、2023年8月に公表しました「企業価値の持続的向上に向けて」において、1株当たりの年間配当金につき2023年12月期は74円とするとともに、2024年12月期は前期を下回らない金額とするよう最大限努力することといたしました。

上記還元方針を踏まえ、当事業年度の剰余金の配当につきまして、普通株式の期末配当金は1株当たり37円とし、中間配当金の1株当たり37円とあわせ、1株当たり年間74円を予定しております。また、甲種類株式(非上場)の期末配当金は1株当たり14,800円とし、中間配当金の1株当たり14,800円とあわせ、1株当たり年間29,600円を予定しております。

次期の配当予想額につきましては、普通株式は1株当たり中間配当金38円、期末配当金38円の1株当たり年間76 円を予定しております。また、甲種類株式は1株当たり中間配当金15,200円、期末配当金15,200円の1株当たり年 間30,400円を予定しております。

なお、2013年10月1日を効力発生日として普通株式1株につき400株の割合で株式分割を行っておりますが、甲種類株式につきましては、株式分割を実施致しておりません。これに伴い、甲種類株式の配当については、当該株式分割前の普通株式と同等になるよう、定款で定めております。


2.会計基準の選択に関する基本的な考え方

当社グループは、財務情報の国際的な比較可能性と会計処理統一によるグループ経営管理の向上を目的として、2023年12月期の有価証券報告書における連結財務諸表から、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)を任意適用することといたしました。