天然ガスを求め、
地中を深く掘りすすむ。
天然ガスのありそうな場所が見つかると、そこに井戸を掘り、本当にガスがあるのか調べます。地下深くまで掘り進むためには、長いパイプを何本もつぎたさなければならず、大きなやぐらやポンプなどの機械が必要となります。これらはまとめて「リグ」と呼びますが、井戸を掘る場所(陸か海か)や井戸の深さによって、いろいろな種類があります。土地をならしたり、機械を運ぶなど準備作業に何ヶ月もかけ、いよいよ掘り始めるわけですが、たとえば6,000mを掘るためには24時間休みなしで働いても丸1年以上かかることもあります。富士山の高さの2倍掘るのですから、たいへんな作業なのです。
陸上大型リグ
6,000m以上掘ることのできる大型リグ。作業員6~7人が一組となり8時間交代で24時間作業を続けます。これまでに5,000m以上の井戸を20本掘った実績があり(1998(平成10)年まで集計)、この中には1993(平成5年)に掘削(くっさく)深度の日本記録6,310mがあります。
陸上小型リグ
コンピューターで制御される最新のリグで、2,000~3,000mの比較的浅い井戸に使用されます。準備期間が短い、作業員が大型リグの半分ですむほか、場所もとらず、静かに掘ることができるなどの特徴があります。天然ガスのほか温泉の掘削にも使われています。
海洋掘削リグ
海に浮かぶリグ。海面に浮かんだまま井戸を掘るので、高波や潮流により流されないよう、人工衛星の電波によっていつでも同じ場所にいるよう工夫されています。このリグで水深600mくらいの場所までは掘削できますが、水深1,000m以上のところで掘ることのできるものもあります。
それでは、いったいどのようにして井戸は掘られるのでしょうか?
ビットと呼ばれるドリルに、1本約10mのパイプ(ドリルパイプ)をつなげていき、これを回転させます。この回転とパイプの重さを利用して、先端のビットでかたい岩石をけずり、地中を掘り進んでいきます。しかし、それだけでは何千mも掘ることはできません。そのまま掘っていけば、掘りくずがたまったり、穴がくずれたり、突然天然ガスがふき出したりするからです。そこで、これらを防ぐために、特殊な泥水(でいすい)を使います。
掘削に使われるビット
掘削の仕組み
地上にあるタンクでつくられた泥水は、強力なポンプでパイプの中に送り込まれ、ビットの先端からいきおいよくふき出し、そしてパイプの外側を通り、掘りくずを乗せて地上までもどってくるのです。掘りくずを取り除いた泥水は、再びポンプでパイプの中に送られます。
仕上げ坑内図
生産テスト中の坑井 地下深く眠っていた天然ガスが初めて地表に姿を現した瞬間。
井戸を掘り終えると、地下の中でガスのありそうな場所を予想し、鉄管(ケーシング)に穴をあけます。ちがった所に穴をあけると、ガスではなく水が出たりするので慎重に行います。ねらったところにガスがあれば、ガスは地下から地上に向かってものすごい勢いで上昇します。出てくるガスの量をはかるために、短時間地上でガスに火をつけてみます。これを生産テストといいます。ガスに火がつくと、まっ赤な炎が空高く舞い上がります。ずっと以前に地球がつくりだした資源が、地下の眠りからよみがえる瞬間です。ガスを探す人も井戸を掘る人も、その準備のため働いた多くの人々も、みんなこの火を見るためにがんばっているのです。
コラム:掘削のいろいろ
日本で一番深くまで掘った記録は6,310mで、海外では12,261mという記録があります。これらの井戸はまっすぐ掘られていますが、川や建物などがじゃまをして、目的層の真上から井戸を掘ることができないことがあります。この場合、少しはなれたところから、斜めに掘る「傾斜掘り」という方法で井戸を掘ります。ふつうは500mから1,500mくらいはなれた場所まで掘削しますが、INPEXは、磐城沖ガス田で、3,881mもはなれた場所まで掘ったことがあります。また、原油や天然ガスの層がとても薄い場合には、この層に沿って水平に掘る「水平掘り」という方法を行うことがあります。さらに、海外の油・ガス田では、1本の井戸から何本も枝わかれして掘る「マルチラテラルドリリング」という方法も行われています。掘削にも資源を効率よく回収するために、いろいろな技術が開発されています。