石油・天然ガス分野とネットゼロ5分野の進捗について、ご説明いたします。
石油・天然ガス分野では、当社の主力事業であるオーストラリアのイクシスLNGプロジェクトの状況をまずご説明いたします。2023年上期は計65のLNGカーゴを出荷いたしました。下期においては、2023年通期で月11カーゴ程度のLNG出荷、年間930万トンを安定生産できる体制の構築を目指して参ります。
また、周辺探鉱や既発見アセットへの参入、開発を加速し、⾧期的な生産量の維持を一層確実にした上で、2030年頃の陸上ガス液化プラントの拡張も視野に入れた更なる生産量拡大を目指します。
アラブ首長国連邦(UAE)の構成国であるアブダビは当社にとって重要なパートナー且つ生産拠点でもあります。当社は、子会社のジャパン石油開発を通じてアブダビにおいて石油開発事業を行っており、同社が本年創立50周年を迎えました。次の50年に向けた当社のUAEに対するコミットメントを示すため、1月に、当社の取締役会をアブダビにて開催しました。同国におけるプロジェクトも安定的に生産を続けており、更なる生産能力の増強に取り組んでおります。当社子会社がオペレーターを担う陸上探鉱鉱区ブロック4においては、試掘井の掘削を行った結果、油ガス層を発見しており、現在、試探掘井の掘削を継続しています。早期の開発移行および生産開始を目指し、評価作業等を進めています。
東南アジアにおいては、当社子会社がオペレーターを担うインドネシアのアバディLNGプロジェクトで現在の開発計画にCCS(Carbon Capture and Storage;CO₂回収・貯留)を新たに追加する改定開発計画(改定POD)を提出いたしました。当社はエネルギートランジション期間における長期的な観点から競争力とサステナビリティを確保し、外部環境の変化にも対応できるクリーンなプロジェクトとするべくインドネシア政府当局と検討を重ねて参りました。改定PODが承認されれば、CCSの導入によりアバディガス田から天然ガスに付随して産出されるCO₂の全量を削減することができる見込みです。 CO₂排出量を削減するCCSを取り入れることで長期にわたるクリーンなエネルギーの安定供給が可能となり、インドネシア並びに日本をはじめアジア諸国に向けたエネルギーセキュリティの向上にも貢献するLNGプロジェクトを目指して参ります。今後は新たなジョイントベンチャーパートナーとなるインドネシアの国営石油会社であるPertamina及びマレーシアの国営石油会社であるPetronasと緊密に連携、協力しながら現地での各種作業等をはじめプロジェクト活動を進めて参ります。
欧州では、ノルウェープロジェクトの中核アセットであるスノーレ油田において、世界初の試みとして、浮体式洋上風力発電施設から石油ガス生産施設への電力供給をおこなうHywind Tampen浮体式洋上風力発電プロジェクトが、5月に通電を開始しました。本プロジェクトは近傍のグルファックス油田との共同事業であり、スノーレ油田及びグルファックス油田の操業に必要な電力の約35%を賄い、年間約20万トンのCO₂排出を削減できると見込んでいます。
その他エリアに属するカザフスタン、アゼルバイジャン等の上流事業についても、生産操業を続けております。
国内においては、北関東地域における一層安定的な天然ガス供給を確保するため、既設の両毛ライン(埼玉県本庄市~群馬県館林市)の一部の複線化工事を進めてまいりましたが、本年同工事を完了し、竣工式を執り行いました。これにより、沿線の需要家の皆様へより安定的な天然ガスの供給が可能となるとともに、天然ガス需要の堅調な伸びが見込まれる北関東地域の発展への貢献が期待されます。また、ガス供給のレジリエンス強化のため北関東地域において新東京ラインの延伸工事についても進めております。
イクシスLNG船
Hywind Tampen浮体式洋上風力発電施設
次に、ネットゼロ5分野の進捗についてご説明します。
まず、水素・アンモニア事業ですが、当社は、昨年10月に新潟県柏崎市東柏崎ガス田平井地区における「ブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験」について、坑井掘削及び地上設備建設のための最終投資決定を行いました。本実証試験は、国産の天然ガスを用いたブルー水素・アンモニアの製造、国内枯渇ガス田での CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage; CO₂回収・利用・貯留)の実施、さらに発電等による利用までを一貫して実証する日本初の試みであり、国産ガスからクリーンなエネルギーを製造する、日本のエネルギーセキュリティーの観点からも重要なプロジェクトとなります。本年5月末には地上設備建設用地の造成が完了し、7月12日に起工式を実施いたしました。また、オーストラリアにおけるクリーン水素ハブの構築に向けた事業化検討調査がオーストラリア政府の補助金プログラムに採択され、本年半ばよりスタディを開始しています。
CCS/CCUSについては、引き続きイクシスLNGプロジェクトでのCCS実施に向けた準備・検討を実施しております。昨年8月にはオーストラリア北部準州沖合GHGアセスメント鉱区(G-7-AP)を落札し、将来的な大規模CCS事業の実現を目指した評価を進めております。2月には、サラワク州営企業であるPetroleum Sarawak Berhad、通称Petrosと、マレーシア・サラワク州内のCO₂濃度の高いガス田や各産業から排出されるCO₂を対象としたCO₂の回収・貯留プロジェクトの開発に向けた共同協力協定を締結し、具体的な協議を開始しております。
これらに加えて独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の公募事業である令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」委託事業において、当社が関与する「首都圏CCS事業」と「日本海側東北地方CCS事業」の2件が正式採択されています。
再生可能エネルギー事業では、3月に英国スコットランド沖合の海域にて操業中のモーレイイースト洋上風力発電所の一部持分を取得しました。また、7月にはイタリアの大手電力・エネルギー会社Enel S.p.Aのオーストラリア子会社の株式を取得しました。今後は、同社とのビジネス協業を通じて、電源開発だけに留まらない電力のリテールやトレーディングを含む再生可能エネルギー電力事業におけるバリューチェーン全体からの収益を確保することで、オーストラリアでの再生可能エネルギー事業を当社の再生可能エネルギー事業の中核の1つとすることを目指します。
日本国内では、当社が出資する小安地熱株式会社が秋田県湯沢市に建設している地熱発電所(かたつむり山発電所)が地熱発電所として初めて「重要電源開発地点の指定」を受けました。かたつむり山発電所は2027年3月の商業運転開始を予定しています。
カーボンリサイクルと新分野事業については、大阪ガス株式会社と共同で、当社が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から採択された助成事業のもと、都市ガスのカーボンニュートラル化に向けたCO₂-メタネーションシステムの実用化を目指した技術開発事業を2021年より開始しております。6月には、千代田化工建設株式会社とEPC契約を締結し、世界最大級となる家庭用1万戸分に相当する400 Nm³-CO₂/hの試験設備の建設を開始いたしました。オーストラリア等における大規模なメタネーション設備の検討も実施しています。
森林保全事業では、InfiniteEARTH社がインドネシアで運営するRimba Raya Biodiversity Reserve REDD+プロジェクトにおいて、2021年に長期のカーボンクレジット取得契約を締結し、同プロジェクトの支援に向けて活動を継続しております。
今後は、新たな森林クレジット獲得に向けた適地選定のためのプロジェクト評価を実施してまいります。
その他にも、カーボンニュートラル商品の販売、サステナビリティ経営の強化など、様々な取組みを進めております。