社長メッセージ

代表取締役社長 上田隆之

当中間期の業績、事業環境を
振り返って

株主の皆様には、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

世界的な金利上昇・金融引き締めが継続する中、世界の経済成長は減速しており、特に新興市場・途上国への影響は注視すべき状況です。一方で、中長期的なエネルギー需要は、世界人口の増加、新興国の経済成長等により、持続的に増加する基調は変わらないものと想定しており、石油・天然ガスは、アジアを中心とする堅調な需要が見込まれます。当社は、日本及び世界のエネルギー需要に応えつつ、国内外に多様なエネルギーをよりクリーンな形で供給することで、経済発展、社会開発、環境保全等に貢献し、ネットゼロカーボン社会に向けた変化に積極的に対応する、エネルギートランスフォーメーションにおけるパイオニアを目指してまいります。

なお、8月には2023年12月期第2四半期決算説明会資料において、企業価値の持続的向上に向けた取り組みについて公表しております。
詳細は、当社ホームページ「IRライブラリー」に掲載の「2023年12月期 第2四半期 決算説明会資料」の11ページから16ページをご覧ください。

当社の2023年12月期第2四半期(1~6月)の売上高は1兆787億円、営業利益は5,705億円、経常利益は6,964億円、親会社株主に帰属する純利益は前年同期比701億円増益の2,542億円となり、第2四半期累計としては過去最高でありました。

石油・天然ガス上流事業は当社グループの基盤事業であり、これはブレント原油価格に大きな影響を受けます。年初1バレル当たり82.10米ドル(期近物終値ベース)で始まったブレント原油価格は、今後の石油需要の見通しや中国のゼロコロナ政策の終了による原油需要回復への期待を背景に一時90米ドル近くまで上昇しました。しかしながら、米国における金融機関の経営破綻の他、中国経済の回復が鈍いとの需要後退の懸念から一時72.66米ドルまで下落しました。その後、OPEC+による協調減産の枠組みが2024年まで延長される旨が合意されたこと等を背景として、一時76.71米ドルまで上昇したものの74.90米ドルで当第2四半期を終えています。

売上高(単位:億円)

売上高

営業利益(単位:億円)

営業利益

経常利益(単位:億円)

経常利益

親会社株主に帰属する純利益(単位:億円)

親会社株主に帰属する純利益

主要プロジェクトの進捗

石油・天然ガス分野とネットゼロ5分野の進捗について、ご説明いたします。

石油・天然ガス分野では、当社の主力事業であるオーストラリアのイクシスLNGプロジェクトの状況をまずご説明いたします。2023年上期は計65のLNGカーゴを出荷いたしました。下期においては、2023年通期で月11カーゴ程度のLNG出荷、年間930万トンを安定生産できる体制の構築を目指して参ります。
また、周辺探鉱や既発見アセットへの参入、開発を加速し、⾧期的な生産量の維持を一層確実にした上で、2030年頃の陸上ガス液化プラントの拡張も視野に入れた更なる生産量拡大を目指します。

アラブ首長国連邦(UAE)の構成国であるアブダビは当社にとって重要なパートナー且つ生産拠点でもあります。当社は、子会社のジャパン石油開発を通じてアブダビにおいて石油開発事業を行っており、同社が本年創立50周年を迎えました。次の50年に向けた当社のUAEに対するコミットメントを示すため、1月に、当社の取締役会をアブダビにて開催しました。同国におけるプロジェクトも安定的に生産を続けており、更なる生産能力の増強に取り組んでおります。当社子会社がオペレーターを担う陸上探鉱鉱区ブロック4においては、試掘井の掘削を行った結果、油ガス層を発見しており、現在、試探掘井の掘削を継続しています。早期の開発移行および生産開始を目指し、評価作業等を進めています。

東南アジアにおいては、当社子会社がオペレーターを担うインドネシアのアバディLNGプロジェクトで現在の開発計画にCCS(Carbon Capture and Storage;CO₂回収・貯留)を新たに追加する改定開発計画(改定POD)を提出いたしました。当社はエネルギートランジション期間における長期的な観点から競争力とサステナビリティを確保し、外部環境の変化にも対応できるクリーンなプロジェクトとするべくインドネシア政府当局と検討を重ねて参りました。改定PODが承認されれば、CCSの導入によりアバディガス田から天然ガスに付随して産出されるCO₂の全量を削減することができる見込みです。 CO₂排出量を削減するCCSを取り入れることで長期にわたるクリーンなエネルギーの安定供給が可能となり、インドネシア並びに日本をはじめアジア諸国に向けたエネルギーセキュリティの向上にも貢献するLNGプロジェクトを目指して参ります。今後は新たなジョイントベンチャーパートナーとなるインドネシアの国営石油会社であるPertamina及びマレーシアの国営石油会社であるPetronasと緊密に連携、協力しながら現地での各種作業等をはじめプロジェクト活動を進めて参ります。

欧州では、ノルウェープロジェクトの中核アセットであるスノーレ油田において、世界初の試みとして、浮体式洋上風力発電施設から石油ガス生産施設への電力供給をおこなうHywind Tampen浮体式洋上風力発電プロジェクトが、5月に通電を開始しました。本プロジェクトは近傍のグルファックス油田との共同事業であり、スノーレ油田及びグルファックス油田の操業に必要な電力の約35%を賄い、年間約20万トンのCO₂排出を削減できると見込んでいます。

その他エリアに属するカザフスタン、アゼルバイジャン等の上流事業についても、生産操業を続けております。

国内においては、北関東地域における一層安定的な天然ガス供給を確保するため、既設の両毛ライン(埼玉県本庄市~群馬県館林市)の一部の複線化工事を進めてまいりましたが、本年同工事を完了し、竣工式を執り行いました。これにより、沿線の需要家の皆様へより安定的な天然ガスの供給が可能となるとともに、天然ガス需要の堅調な伸びが見込まれる北関東地域の発展への貢献が期待されます。また、ガス供給のレジリエンス強化のため北関東地域において新東京ラインの延伸工事についても進めております。

イクシスLNG船

イクシスLNG船

Hywind Tampen浮体式洋上風力発電施設

Hywind Tampen浮体式洋上風力発電施設

次に、ネットゼロ5分野の進捗についてご説明します。

まず、水素・アンモニア事業ですが、当社は、昨年10月に新潟県柏崎市東柏崎ガス田平井地区における「ブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験」について、坑井掘削及び地上設備建設のための最終投資決定を行いました。本実証試験は、国産の天然ガスを用いたブルー水素・アンモニアの製造、国内枯渇ガス田での CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage; CO₂回収・利用・貯留)の実施、さらに発電等による利用までを一貫して実証する日本初の試みであり、国産ガスからクリーンなエネルギーを製造する、日本のエネルギーセキュリティーの観点からも重要なプロジェクトとなります。本年5月末には地上設備建設用地の造成が完了し、7月12日に起工式を実施いたしました。また、オーストラリアにおけるクリーン水素ハブの構築に向けた事業化検討調査がオーストラリア政府の補助金プログラムに採択され、本年半ばよりスタディを開始しています。

CCS/CCUSについては、引き続きイクシスLNGプロジェクトでのCCS実施に向けた準備・検討を実施しております。昨年8月にはオーストラリア北部準州沖合GHGアセスメント鉱区(G-7-AP)を落札し、将来的な大規模CCS事業の実現を目指した評価を進めております。2月には、サラワク州営企業であるPetroleum Sarawak Berhad、通称Petrosと、マレーシア・サラワク州内のCO₂濃度の高いガス田や各産業から排出されるCO₂を対象としたCO₂の回収・貯留プロジェクトの開発に向けた共同協力協定を締結し、具体的な協議を開始しております。
これらに加えて独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の公募事業である令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」委託事業において、当社が関与する「首都圏CCS事業」と「日本海側東北地方CCS事業」の2件が正式採択されています。

再生可能エネルギー事業では、3月に英国スコットランド沖合の海域にて操業中のモーレイイースト洋上風力発電所の一部持分を取得しました。また、7月にはイタリアの大手電力・エネルギー会社Enel S.p.Aのオーストラリア子会社の株式を取得しました。今後は、同社とのビジネス協業を通じて、電源開発だけに留まらない電力のリテールやトレーディングを含む再生可能エネルギー電力事業におけるバリューチェーン全体からの収益を確保することで、オーストラリアでの再生可能エネルギー事業を当社の再生可能エネルギー事業の中核の1つとすることを目指します。
日本国内では、当社が出資する小安地熱株式会社が秋田県湯沢市に建設している地熱発電所(かたつむり山発電所)が地熱発電所として初めて「重要電源開発地点の指定」を受けました。かたつむり山発電所は2027年3月の商業運転開始を予定しています。

カーボンリサイクルと新分野事業については、大阪ガス株式会社と共同で、当社が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から採択された助成事業のもと、都市ガスのカーボンニュートラル化に向けたCO₂-メタネーションシステムの実用化を目指した技術開発事業を2021年より開始しております。6月には、千代田化工建設株式会社とEPC契約を締結し、世界最大級となる家庭用1万戸分に相当する400 Nm³-CO₂/hの試験設備の建設を開始いたしました。オーストラリア等における大規模なメタネーション設備の検討も実施しています。

森林保全事業では、InfiniteEARTH社がインドネシアで運営するRimba Raya Biodiversity Reserve REDD+プロジェクトにおいて、2021年に長期のカーボンクレジット取得契約を締結し、同プロジェクトの支援に向けて活動を継続しております。
今後は、新たな森林クレジット獲得に向けた適地選定のためのプロジェクト評価を実施してまいります。

その他にも、カーボンニュートラル商品の販売、サステナビリティ経営の強化など、様々な取組みを進めております。


2023年12月期の業績見通し
及び株主還元について

2023年12月期の連結業績予想については、通期の平均原油価格1バレル当たり80.0米ドル、為替レート1米ドル当たり135.0円の前提のもと、売上高は2兆310億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、5月の発表予想から200億円増益の3,200億円となる見通しです。

2023年12月期の配当につきましては、1株当たりの中間配当金を37円とし、期末配当金も同額の37円の予定といたしました。これにより、当社の1株当たりの年間配当額は前期の62円から12円増配となり、当社過去最高となる74円となる見込みです。また、今期は総額1,000億円を上限とする自己株式の取得を実施し、前期に取得した自己株式と合わせて、全ての自己株式の消却を行う予定です。これにより今期の株主還元は、前期と同様の2,000億円規模となり、総還元性向は61%程度となる見通しです。

当社は、今後も石油・天然ガスから水素、再生可能エネルギーまで多様でクリーンなエネルギーの安定供給を目指すことで、ネットゼロカーボン社会の実現に向けた取組みを推進し、グループ全体での企業価値向上に努めてまいります。

引き続き、株主の皆さまのご支援を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。