人権の尊重

基本的な考え方

当社は、国際人権章典、ILO国際労働基準、国連のビジネスと人権に関する指導原則、国連グローバル・コンパクトの人権に関する原則などの国際規範を支持しています。また、人権尊重に対する当社の姿勢を明示し、責任を果たすために2017年5月にINPEXグループ人権方針を策定・公表し、同方針に基づいて事業活動を行う国・地域において、サプライチェーンを含む全てのステークホルダーの人権への取組を推進しています。この人権方針において当社は、強制労働や児童労働を一切認めず、結社の自由及び団結権の保護を尊重することを確認しています。

また、英国現代奴隷法「Modern Slavery Act 2015」への対応として、2016年度より毎年ウェブサイトにステートメントを公表し、当社及びそのサプライチェーン上の奴隷労働防止や人身取引防止に関する方針や体制、取組などを開示しています。

マネジメント体制

当社の人権に対するアプローチは、当社取締役会によって承認されたINPEXグループ人権方針に明記されています。また、当社取締役会によって選任されたコンプライアンス担当役員が、委員長としてコンプライアンス委員会を招集し、同委員会は人権関連のリスクやパフォーマンスを取締役会に報告しています。

INPEXグループの全役員及び従業員を対象とした人権方針、企業行動憲章、行動基本原則及び行動規範において、全ての役員及び従業員に対し法令遵守はもちろんのこと、社会規範を尊重し、高い倫理観を持った行動をするよう義務付けています。とりわけ行動基本原則においては、人権に関して以下のとおり規定しています。

  • 人権が個人の尊厳に由来する重要な権利であることを認識し、関係各国において、個人の人権を尊重すること
  • 人権に関する国際規範を尊重し、人権を侵害するような行動に加担しないよう配慮すること
  • 人種、肌の色、性別、性的指向、性自認、年齢、信条、宗教、出生、国籍、各種障がい、学歴などによる差別を行わないこと
  • 従業員の意思に反して労働を強制せず、また、児童を就労させないこと

これらに基づいた企業倫理・企業行動を徹底するため、常勤の取締役及び執行役員等を構成員とし、コンプライアンス担当役員を委員長とするコンプライアンス委員会を定期的に開催しています。コンプライアンス委員会事務局である総務ユニットは、コンプライアンス委員会に加えて、社内各部署からのコンプライアンス推進担当者によって構成されるコンプライアンス推進担当者連絡会を定期的に開催し、ハラスメント防止を含む上記の人権に関する取組推進に努めています。

人権への取組

プロジェクト推進の際は、IFC Performance Standardsを自主基準に採用し、新規だけでなく既存のプロジェクトに対しても事業が操業地域に与え得る環境・社会影響について労働課題及び人権側面を含めて調査し、リスクを特定し、回避・緩和・モニタリングなどを行っています。調査に当たっては、地元政府や地域住民をはじめとするステークホルダーとの対話を重視しています。オーストラリアにおいては、2020年に実施した、政府、産業、企業及び地域のステークホルダーとの対話は250回以上にのぼります。事業撤退時の廃坑・施設撤去に伴う環境や社会への影響についても、事前に調査・評価した上で、地域社会の安全・環境に十分に配慮し、地域住民の了解を得て適切な処理を行っています。

IFC Performance Standards に沿ったコントラクター監査

オーストラリアにおいては、イクシスLNGプロジェクトの操業及びPhase 2の建設に関わる主要なコントラクターに対し、当社の要求事項に沿った人事労務管理計画書の策定を求めています。またその実行については、コントラクターとの定期的なミーティングや監査を通じ、モニタリングを実施しています。なお、当社の要求事項は、IFC Performance Standards 2に則しています。

2020年には、インドネシアのバタム島のファブリケーションヤードに従事するコントラクターの監査を実施しました。この監査では、児童労働、強制労働、労働条件や苦情対応などを含むIFC Performance Standards2の「労働者および労働条件の準拠状況」について確認を行いました。

この監査の結果、IFC Performance Standards2のコンプライアンス違反は特定されず、このコントラクターでは、ファブリケーションヤードに従事する従業員や作業員に関わる違反を特定し排除するために必要なシステムやプロセス、計画や手順を整えていることが確認されました。また今後、サブコントラクターや労働供給業者に対して、年に一度実施する倫理監査の結果について、当社と共有することを改善案として提案しました。

人権影響評価の実施

インドネシアのアバディLNGプロジェクトでは、現在実施中の環境・社会影響評価において、国際的な環境社会ガイドラインであるIFC PerformanceStandards の人権に関する要求事項についても検討・評価しています。これまでの環境・社会影響評価の各工程における人権への取組は、以下のとおりとなっています。

時期 工程 人権に関する取組
2019年 評価項目の選定
  • 社会的弱者(女性、子ども、貧困層、高齢者、及び障がい者)への影響を評価項目に選定。
  • 現地住民の伝統的慣習法に基づいた生活様式(文化、慣習、生計手段等)、神聖なサイト、文化遺産等への影響を評価項目に選定。
  • 上記項目に関する既存データを収集・分析。
現況調査
  • FGD(Focus Group Discussion)、HouseholdSurvey、及びKI(I Key Informant Interview)を実施し、被影響コミュニティの社会的弱者、及び伝統的慣習法に基づいた生活様式(文化、慣習、生計手段等)、神聖なサイト、文化遺産、及び土地権利の現状を把握。
2020年 影響評価
  • 建設時、及び操業時における社会的弱者、伝統的慣習法に基づいた生活様式の現地住民への影響評価を実施。
  • 影響評価に基づき、影響低減策及びモニタリング計画を策定。

2021年には、影響評価の結果、影響低減策及びモニタリング計画について、現地当局との協議を継続していきます。また、今後、VPSHR(安全と人権に関する自主原則)の要求事項を含め、人権に関連する社内規程や文書を整備し、Social Management Systemを構築する予定です。

人権デューディリジェンス

当社では、人権マネジメントの強化を目的として、国内外の拠点を対象として、2016年度より、人権デューディリジェンスを行っています。調査の結果、調達先を含めたビジネスパートナーにおける苦情対応の不備があった場合の人権リスク等が指摘されたため、これらは前項に記載した「主要調達先の自己評価アンケート」にも反映されました。以降、下記の行動サイクルのPDCA化に向けた、各拠点との対話を継続しています。

デスクトップ調査
  • ESG関連リスクの情報提供機関であるRepRiskのデータベースより、過去一年間におけるOil & Gasセクターの不祥事を抽出し、発生し得る人権侵害ケースとして次の5つを特定ー児童労働、強制労働、結社の自由と団体交渉権、雇用における差別、社会的差別
  • Verisk Maplecroftをはじめとする調査機関の文献を基に、当社が事業を行っている国のカントリーリスクを、High/Medium/Lowの三段階に分類
インタビュー調査
  • デスクトップ調査によって洗い出された人権リスクへの対応状況を把握するため、当社が事業を行っている全ての拠点に対してUNGCの10原則に沿ったグローバル・コンパクトの自己評価ツール(Global Compact Self Assessment Tool)を参照したアンケート、インタビュー等を実施
アクションプランの検討・実施
  • 上記の調査結果を受けた評価に基づき人権リスクに対する当社のマネジメント状況を確認
  • 評価結果を各拠点の担当者にフィードバックした上で、人権方針の周知徹底や人権教育の提供等の今後の対応について協議
  • 評価結果を踏まえた人権尊重強化の取組の一つとして、従業員を対象とした人権教育を継続的に実施

プロジェクトにおける人権デューディリジェンス

当社がオペレーターとして操業するプロジェクトについては、調達契約ひな型において人権条項を盛り込んでいます。特にオーストラリアのイクシスLNGプロジェクトにおいては、新規サプライヤー選定に係る標準入札図書に人権関連の質問項目を含めることでコントラクターの人権デューディリジェンスを実施しています。

当社がノンオペレーターとして参画するプロジェクトについては、2020年に各プロジェクトのオペレーター等に対してアンケートによる調査を行い、人権に関する取組状況を確認しています。

顕著な人権リスクの特定

当社は外部の人権専門家を招き、当社がオペレーターを務めるプロジェクトに対する人権リスクアセスメントを実施しました。アセスメントの主な目的は下記のとおりです。

  • 顕著な人権リスクの特定
  • 人権リスクマネジメントのための課題整理

アセスメントにはRepRiskのデータベース並びにVerisk Maplecroftをはじめとする調査機関の文献を参照したHRIA(Human Rights Impact Assessment)ツールを使用しています。

特定された顕著な人権リスクは以下のとおりです。

  • 児童労働
  • 強制労働
  • 文化遺産及び伝統文化への影響
  • 地域住民の権利侵害
  • 求人・雇用における差別
  • コミュニティに影響を与える環境汚染

このアセスメントでは、PDCAサイクルやモニタリング等のマネジメントシステムの運用体制やINPEXグループ人権方針のあり方についても分析しました。同業他社の基準となるグッドプラクティスも考慮した結果、重大なギャップは確認されませんでしたが、当社は引き続き人権への取組を強化していきます。

役員・従業員の人権意識向上

様々なステークホルダーの人権を考慮しつつ日々の業務に取り組む重要性の認識を深めるために、2017年度に人権に関する研修を全役員及び従業員を対象に実施し、2018年度以降は新入社員を対象に毎年実施しています。また、業界団体であるIPIECA※1の人権分科会に参加しており、児童労働、強制労働といった現代奴隷防止に関する情報共有やサプライチェーン上の人権デューディリジェンスガイドラインの見直しなどに協力しています。なお、2020年度に人権侵害に関する重大な違反は発生していません。

  1. ※1IPIECA
    石油・天然ガス業界における環境や社会課題に関する国際的なイ二シアティブ

苦情処理メカニズムの設置

当社は、国内外の全ての拠点において、人権についても社内外の全てのステークホルダーからの問い合わせや苦情・通報に真摯に対応しています。社内においては、人権、差別、ハラスメント等コンプライアンス違反を早期探知するため、内部通報制度を整備し運用しています。2020年度は、人権、差別、ハラスメントに関する通報は5件ありましたが、「内部通報規則」に従い、いずれも適切に対処しました。

地域住民やサプライヤーを含む社外のステークホルダーからのご意見については、当社ウェブサイトに問い合わせ窓口を設置し、適時適切に対応しています。ウェブサイトに加えて、インドネシアでは、現地語での電話による対応も行っています。2020年には、日本、インドネシア及びオーストラリアにおいて、人権に関する苦情の受け付けはありませんでした。

労使間の対話

INPEX 労働組合と締結している労働協約において、組合が労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を有することを定めるとともに、海外事務所においても、労働問題に関する労使間の話合いの場を設けています。会社の抱える課題や将来の見通しなど、労働問題にとどまらない様々な問題について労使が意見交換をする場を定期的に設けることで、健全な労使関係の維持・発展に努めています。加えて、国内事業所においては、5つの労働組合支部合同で年2回の労使協議会を開催しており、支部単位でも労使間でコミュニケーション・対話を密に行っています。

また、従業員に著しい影響を与える業務変更の際には、事前に適切な通知期間を設けるよう配慮しており、2008年10月の労働組合結成後、これまで苦情処理対応は発生していません。