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FY2022

Sustainability Report 2022 (for FY2021)

Sustainability Report 2022 (for FY2021)

人権の尊重

基本的な考え方

当社は、国際人権章典、ILO国際労働基準、国連のビジネスと人権に関する指導原則、国連グローバル・コンパクトの人権に関する原則などの国際規範を支持しています。また、人権尊重に対する当社の姿勢を明示し、責任を果たすために2017年5月にINPEXグループ人権方針を策定・公表し、同方針に基づいて事業活動を行う国・地域において、サプライチェーンを含む全てのステークホルダーの人権への取組みを推進しています。この人権方針において当社は、強制労働や児童労働を一切認めず、結社の自由及び団結権の保護を尊重することを確認しています。

また、英国現代奴隷法「Modern Slavery Act 2015」への対応として、2016年度より毎年ウェブサイトにステートメントを公表し、当社及びそのサプライチェーン上の奴隷労働防止や人身取引防止に関する方針や体制、取組みなどを開示しています。

マネジメント体制

当社の人権に対するアプローチは、当社取締役会によって承認されたINPEXグループ人権方針に明記されています。また、当社取締役会によって選任されたコンプライアンス担当役員が、委員長としてコンプライアンス委員会を招集し、同委員会は人権関連のリスクやパフォーマンスを取締役会に報告しています。

当社の全役員及び従業員を対象とした人権方針、サステナビリティ憲章、行動基本原則及び行動規範において、全ての役員及び従業員に対し法令遵守はもちろんのこと、社会規範を尊重し、高い倫理観を持った行動をするよう義務づけています。とりわけ行動基本原則においては、人権に関して以下のとおり規定しています。

  • 人権が個人の尊厳に由来する重要な権利であることを認識し、関係各国において、個人の人権を尊重すること
  • 人権に関する国際規範を尊重し、人権を侵害するような行動に加担しないよう配慮すること
  • 人種、肌の色、性別、性的指向、性自認、年齢、信条、宗教、出生、国籍、各種障がい、学歴などによる差別を行わないこと
  • 従業員の意思に反して労働を強制せず、また、児童を就労させないこと

これらに基づいた企業倫理・企業行動を徹底するため、常勤の取締役及び執行役員などを構成員とし、コンプライアンス担当役員を委員長とするコンプライアンス委員会を定期的に開催しています。コンプライアンス委員会事務局である総務ユニットは、コンプライアンス委員会に加えて、社内各部署からのコンプライアンス推進担当者によって構成されるコンプライアンス推進担当者連絡会を定期的に開催し、ハラスメント防止を含む上記の人権に関する取組みの推進に努めています。

INPEXグループ人権方針

英国現代奴隷法ステートメント

サステナビリティ憲章

行動基本原則・行動規範

人権デューディリジェンス

当社では、人権マネジメントの強化を目的として、国内外の拠点を対象として、2016年度より、人権デューディリジェンスを行っています。調査の結果、調達先を含めたビジネスパートナーにおける苦情対応の不備があった場合の人権リスクなどが指摘されたため、「主要調達先の自己評価アンケート」にも反映されました。以降、下記の行動サイクルのPDCA化に向けた、各拠点との対話を継続しています。

デスクトップ調査

  • ESG 関連リスクの情報提供機関であるRepRiskのデータベースより、Oil&Gasセクターの不祥事を抽出し、発生し得る人権侵害ケースとして次の5つを特定ー児童労働、強制労働、結社の自由と団体交渉権、雇用における差別、社会的差別
  • Verisk Maplecroftを始めとする調査機関の文献を基に、当社が事業を行っている国のカントリーリスクを、High / Medium / Lowの三段階に分類

インタビュー調査

  • デスクトップ調査によって洗い出された人権リスクへの対応状況を把握するため、当社が事業を行っている全ての拠点に対してUNGCの10原則に沿ったグローバル・コンパクトの自己評価ツール(Global Compact Self Assessment Tool)を参照したアンケート、インタビューなどを実施
    • 2022年2月には、アンケートの見直しを実施

アクションプランの検討・実施

  • 上記の調査結果を受けた評価に基づき人権リスクに対する当社のマネジメント状況を確認
  • 評価結果を各拠点の担当者にフィードバックした上で、人権方針の周知徹底や人権教育の提供などの今後の対応について協議
  • 評価結果を踏まえた人権尊重強化の取組みの一つとして、従業員を対象とした人権教育を継続的に実施

プロジェクトにおける人権デューディリジェンス

当社がオペレーターとして操業するプロジェクトについては、国際的な環境社会ガイドラインであるIFC Performance Standardsを採用し、人権を含む、社会及び環境リスクの管理を行っています。イクシスの操業については、定期的なレポートや監査を通じ、このIFC基準のコンプライアンスをモニターしています。

この基準には、児童労働、強制労働、労働条件や苦情対応などをカバーするIFC Performance Standards 2の「労働者及び労働条件の準拠状況」が含まれます。

当社がノンオペレーターとして参画するプロジェクトについては、2020年に各プロジェクトのオペレーターなどに対してアンケートによる調査を行い、人権に関する取組み状況を確認しています。

顕著な人権リスクの特定

当社は外部の人権専門家を招き、当社がオペレーターを務めるプロジェクトに対する人権リスクアセスメントを実施しました。アセスメントの主な目的は下記のとおりです。

  • 顕著な人権リスクの特定
  • 人権リスクマネジメントのための課題整理

アセスメントにはRepRiskのデータベース並びにVerisk Maplecroftを始めとする調査機関の文献を参照したHRIA(Human Rights Impact Assessment)ツールを使用しています。

特定された顕著な人権リスクは以下のとおりです。

  • 児童労働
  • 強制労働
  • 文化遺産及び伝統文化への影響
  • 地域住民の権利侵害
  • 求人・雇用における差別
  • コミュニティに影響を与える環境汚染

このアセスメントでは、PDCAサイクルやモニタリングなどのマネジメントシステムの運用体制やINPEXグループ人権方針の在り方についても分析しました。

2022年2月には、日本と米国の拠点を対象にアンケートとインタビューを実施しました(米国は初回)。日本においては、児童労働と強制労働のマネジメント状況の改善を確認しました。米国においては、顕著な人権リスクと、そのマネジメント状況を確認しました。重大なリスクは確認されませんでしたが、当社は引き続き人権への取組みを強化していきます。

人権への取組み

当社は、事業活動やサプライチェーンにおける現代奴隷のリスクを特定し対応するためのプロセスやシステムづくりに取り組んでいます。

2021年においては、豪州現代奴隷法に基づき、当社豪州子会社における初めてのステートメントを発行しました。また、同業他社との人権に関するワーキンググループへの参加を通じ、サプライヤーにおける現代奴隷のリスクアセスメントを標準化して実施するための自己評価質問事項を策定しました。当社においては、サプライヤーの選定プロセスの一環として、この現代奴隷のリスクアセスメント自己評価を導入しています。このほか、サプライヤーに対して当社の人権方針の浸透を図るため、国内外の拠点などにおいて人権啓発ポスターの掲示を実施しました。引き続き、現代奴隷のリスク管理を、当社の方針、手順や運営に組み入れるための取組みを実施しています。

人権影響評価の実施

インドネシアのアバディLNGプロジェクトでは、現在実施中の環境・社会影響評価において、国際的な環境社会ガイドラインであるIFC Performance Standardsの人権に関する要求事項についても検討・評価しています。これまでの環境・社会影響評価の各工程における人権への取組みは、下図の通りとなっています。

時期

工程

人権に関する取組み

2019年

評価項目の選定

社会的弱者(女性、子ども、貧困層、高齢者、及び障がい者 )への影響を評価項目に選定

  • 現地住民の伝統的慣習法に基づいた生活様式(文化、慣習、生計手段など )、神聖なサイト、文化遺産などへの影響を評価項目に選定
  • 上記項目に関する既存データを収集・分析

現況調査

  • FGD(Focus Group Discussion )、Household Survey、及びKII(Key Informant Interview )を実施し、被影響コミュニティの社会的弱者、及び伝統的慣習法に基づいた生活様式(文化、慣習、生計手段など )、神聖なサイト、文化遺産、及び土地権利の現状を把握

2020〜2021年

影響評価

  • 建設時、及び操業時における社会的弱者、伝統的慣習法に基づいた生活様式の現地住民への影響評価を実施
  • 影響評価に基づき、影響低減策及びモニタリング計画を策定

今後、VPSHR(安全と人権に関する自主原則)の要求事項を含め、人権に関連する社内規程や文書を整備し、Social Management Systemを構築する予定です。

役員・従業員の人権意識向上

さまざまなステークホルダーの人権を考慮しつつ日々の業務に取り組む重要性の認識を深めるために、2017年度に人権に関する研修を全役員及び従業員を対象に実施し、2018年度以降は新入社員を対象に毎年実施しています。また、業界団体であるIPIECAの人権分科会に参加しており、児童労働、強制労働といった現代奴隷防止に関する情報共有やサプライチェーン上の人権デューディリジェンスガイドラインの見直しなどに協力しています。なお、2021年度に人権侵害に関する重大な違反は発生していません。

リスク低減に向けた取組み・是正処置

人権デューディリジェンスで特定されたリスクを低減するために、以下の取組みを行っています。

  • 顕著な人権リスク及びアンケート内容の見直し:リスクとその対応策をより的確にモニタリングするために、リスクとアンケート内容を定期的に見直しています。
  • インタビュー調査後のフォローアップ:インタビューで改善すべき点が指摘された拠点に対して、事後インタビューを行っています。

苦情処理メカニズムの設置

当社は、国内外の全ての拠点において、人権についても社内外の全てのステークホルダーからの問い合わせや苦情・通報に真摯に対応しています。社内においては、人権、差別、ハラスメントなどコンプライアンス違反を早期探知するため、内部通報制度を整備し運用しています。2021年度は、人権、差別、ハラスメントに関する通報は6件ありましたが、「内部通報規則」に従い、いずれも適切に対処しました。

地域住民やサプライヤーを含む社外のステークホルダーからの御意見については、当社ウェブサイトに問い合わせ窓口を設置し、適時適切に対応しています。ウェブサイトに加えて、インドネシアでは、現地語での電話による対応も行っています。また、オーストラリアでは、地域住民からの問い合わせや人権や法令遵守に関する苦情に適切に対応するため、地域住民との対話及び苦情対応手順を定めています。2021年には、日本、インドネシア及びオーストラリアにおいて、人権に関する苦情の受け付けはありませんでした。

労使間の対話

INPEX労働組合と締結している労働協約において、組合が労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を有することを定めるとともに、海外事務所においても、労働問題に関する労使間の話合いの場を設けています。会社の抱える課題や将来の見通しなど、労働問題に留まらないさまざまな問題について労使が意見交換をする場を定期的に設けることで、健全な労使関係の維持・発展に努めています。加えて、国内事業所においては、5つの労働組合支部合同で年2回の労使協議会を開催しており、支部単位でも労使間でコミュニケーション・対話を密に行っています。

また、従業員に著しい影響を与える業務変更の際には、事前に適切な通知期間を設けるよう配慮しており、2008年10月の労働組合結成後、これまで苦情処理対応は発生していません。