気候変動対応

基本的な考え方

当社は2021年1月に、2050年ネットゼロカーボン社会に向けた経営の基本方針である「今後の事業展開」を発表し、同時に「気候変動対応の基本方針」を改定しました。

これらの方針に基づき、当社は、今後も増加する我が国及び世界のエネルギー需要に応え、長期にわたって引き続き、エネルギー開発・安定供給の責任を果たしつつ、2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けたエネルギー構造の変革に積極的に取り組みます。また、気候変動に関するパリ協定目標の実現に貢献すべく、2050年自社排出ネットゼロ目標を柱とする気候変動対応目標を定めました。

このように、エネルギー需要への適切な対応と温室効果ガスの排出削減という2つの社会的な要請にバランスをもって応えるべく、気候変動リスク及び機会を適切に評価・管理しながら事業を推進していきます。

なお、気候変動関連の情報開示については、従来通りTCFD 提言に沿った開示を持続的な取組として推進しています。こうした方針について「気候変動対応の基本方針」を策定し(2015年12月発表、2021年1月改定)、ウェブサイト上に掲載※1しています。

  1. ※1「気候変動対応の基本方針」及び「INPEXの取組」[PDF:1.25MB]
担当役員のメッセージ
橘高 公久
取締役 専務執行役員
経営企画本部長

当社は2021年1月に発表した2050年ネットゼロカーボン社会に向けた経営の基本方針である「今後の事業展開」で、パリ協定目標の実現に貢献すべく2050年自社排出ネットゼロ(Scope1+2)目標を柱とする気候変動対応目標を定めました。同時にこの目標を反映する形で「気候変動対応の基本方針」を改定しましたが、気候変動対応関連の情報開示については、引き続きTCFD 提言に沿った開示を持続的な取組として推進いたします。

具体的には、ガバナンスについては、取締役会による監督体制の維持、関与の拡大を図っており、事業戦略に関しては、IEA※2 WEO Sustainable Development Scenario(SDS※3:世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求するパリ協定目標と整合的なシナリオ)を含むいくつかのシナリオへの対応力を評価した上で、ポートフォリオの検討材料の一つとしています。リスク及び機会の評価は、年次サイクルの評価・管理体制を維持し、そのプロセスから導かれる対策に取り組んでいます。温室効果ガス排出量管理については、設定した気候変動対応目標の達成に向けた取組を推進するとともに、その進捗状況の管理に努めてまいります。

気候変動対応目標達成への取組として森林保全によるCO2吸収の推進を挙げていますが、インドネシアのRimba Raya Biodiversity Reserve REDD+※4プロジェクトを支援することにより、2021年から5年間にわたって500万トンのカーボンクレジットを取得することをInfiniteEARTH 社と2021年2月に合意しました。

今後も、スピード感をもって気候変動対応目標の達成に向けた取組を推進してまいります。

  1. ※2International Energy Agency
    国際エネルギー機関
  2. ※3Sustainable Development Scenario
    公表政策持続可能な開発シナリオ
  3. ※4森林減少・劣化の抑制によるCO2排出削減を意味するREDD(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation)に、森林管理による森林劣化防止や植林などによる炭素ストックの積極的増加を加えたカンクン合意(2010年)の定める概念

気候変動対応マイルストーン

気候変動対応目標と目標達成に向けた取組

当社は、パリ協定目標(産業革命前からの平均気温の上昇を2℃未満に抑え、さらに1.5℃に抑える努力をする目標レベル)に則したネットゼロカーボン社会の実現に貢献すべく、3つの目標を定めました。

一つ目は、パリ協定目標に則し、2050年までに排出量ネットゼロとする目標を設定しました。二つ目は、そのプロセスとして、2030年時点で排出原単位を30%以上低減(2019年比)します。同目標の対象は当社の事業プロセスからの排出量であるScope1+2となっています。三つ目は、販売した石油ガスの燃焼によるScope3排出量については、バリューチェーン全体の課題として、関連する全てのステークホルダーと協調してその低減に取り組みます。

また、ネットゼロ目標達成に向けた具体的な対策は、①CO2地下貯留(CCUS)の推進、②再生可能エネルギーの取組の強化、③森林保全によるCO2吸収の推進、④メタン排出原単位(メタン排出量÷天然ガス生産量)を現状の低いレベル(約0.1%)で維持、⑤通常操業時のゼロフレア等を挙げています。

当社の排出量実績

2019年 2020年 単位
Scope1※1 8,557 7,328 千トン-CO2e
Scope2※1 204 179 千トン-CO2e
排出原単位※2 41 35 kg-CO2e/boe
Scope3※3 82,626 77,305 千トン-CO2e
メタン排出原単位※4 0.10 0.07

当社の排出原単位

2020年の排出原単位は35kg-CO2e/boe で前年比15%低下しました。

  • ※1当社権益分排出量(エクイティシェア)
  • ※2オフセットを含めた排出原単位
  • ※3詳細はESGデータ集(P92)参照
  • ※4メタン排出原単位:メタン排出量÷天然ガス生産量(%)、Oil and Gas Climate Initiativeの手法を踏襲
  • ※5オフセットには、再生可能エネルギーによる削減貢献量と森林保全による吸収量が含まれる。再生可能エネルギーによる貢献量は「国際協力銀行の地球環境保全業務における温室効果ガス排出削減量の測定・報告・検証に係るガイドライン」(J-MRVガイドライン)に基づいて算出

サプライチェーンでの排出削減の取組-Scope3削減に向けて

当社は100%子会社インペックス・シッピングが定期傭船しているLNG船からの温室効果ガス排出量データを入手し、Scope3排出量として開示しています※5。これらのLNG船は、当社主要プロジェクトであるイクシスLNGプロジェクト等のLNGを輸送しています。

また、当社は現在お客さまに向け「カーボンニュートラルLNG・天然ガス」の販売を進めています。「カーボンニュートラルLNG・天然ガス」は、当社が販売するLNG・天然ガスにおいて、天然ガスの採掘から輸送、燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスをその排出量に見合う量のCO2クレジットで相殺(カーボン・オフセット)することで、ライフサイクル※6で温室効果ガスが発生していないとみなされるLNG・天然ガスのことです。当社はこのようなカーボンニュートラル商品の提供を通じ、お客さまと共に事業の低炭素化に取り組んでいきます。

一方で、工事請負先(コントラクター)及び資材調達先に対しては温室効果ガスの排出削減に向け働きかけています。当社の「環境安全方針」においては「温室効果ガス排出管理プロセスに基づき、温室効果ガス排出の削減に努めること」を宣言しています。工事請負契約及び資材調達契約に「環境安全方針」の遵守を求める条項を盛り込むことで、サプライチェーンでの排出削減の取組を推進しています。

  1. ※5ESGデータ集[PDF:6.71MB]
  2. ※6LNG・ガスの生産から燃焼までの排出量の合計

当社の低炭素社会シナリオ

2040年※7までの低炭素社会に向けたエネルギー需給等の事業環境の見通しについて、当社は国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook(WEO)の公表政策シナリオ(IEA-STEPS)並びに持続可能な開発シナリオ(IEA-SDS)を参照しています。また、これらのシナリオを基軸に、独自シナリオとして技術進展シナリオ(市場原理に基づくコスト低下により再生可能エネルギーやEV(電気自動車)の需要が大幅に高まるシナリオ)、政策進展シナリオ(パリ協定に基づく各国の気候変動政策が更に強化されるシナリオ)を想定しています。以上の既存及び独自の計4つのシナリオを脱炭素社会への移行期における経営戦略の検討材料とし、年に1度、IEA WEOの更新時期に合わせシナリオのレビューを実施し、今後の当社戦略の方向性を検討しています。

当社は、これらのシナリオを活用し長期的な経営戦略として2021年1月に「今後の事業展開~2050ネットカーボン社会に向けて~」を策定しました。今後もシナリオのレビューを用いながら事業環境の変化をいち早く把握し、社会の動向に合わせ経営戦略・経営計画の見直しを行っていきます。

  1. ※7IEAのWEOでは2040年までの国際エネルギー情勢について展望している

INPEXの低炭素社会シナリオ

IEA WEO シナリオの概要

IEA WEO 公表政策シナリオ
Stated Policies Scenario(STEPS)

IEA WEO の「公表政策シナリオ」は、現在発表済みの政策が実現されることを前提としたシナリオです。WEO2020の公表政策シナリオによれば、2040年に向けて一次エネルギーの需要は引き続き伸び続け、このうち石油・天然ガスは全需要の54%を占めるとされます。再生可能エネルギー(水力、バイオマスを除く)が全需要に占める割合は、石油・天然ガスと比較して小さいものの、2040年までに2019年の需要量の約4倍の規模へと大きく成長する見込みです。

IEA WEO 持続可能な開発シナリオ
Sustainable Development Scenario(SDS)

IEA WEO「持続可能な開発シナリオ」は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のうちエネルギー関連目標を達成することを前提にした脱炭素化シナリオです。世界規模で電化が進展し、温室効果ガス排出量が減少することで、パリ協定目標(世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する目標)も達成します。

エネルギー効率性の向上により、2040年に向けて一次エネルギーの需要は減少します。一方、石油・天然ガスの全需要に占める割合は、2040年時点でも46%となっています。再生可能エネルギーは、2040年では2019年の需要量の約9倍に達します。

TCFD提言への持続的な取組

気候変動関連のガバナンス体制

当社は、気候変動対応に関し、取締役会による監督体制の維持、関与の拡大を図っています。具体的には、気候変動対応の基本方針の決定を取締役会での決議事項としています。当社は2021年1月に「今後の事業展開~2050ネットゼロカーボン社会に向けて~」を発表し、パリ協定目標に則し、2050年までに排出量ネットゼロとする目標を設定しました。これに伴い「気候変動対応の基本方針」※8を2021年1月に全面的に改定し対外開示しました。また、同基本方針に基づく気候変動対応の推進状況を具体的に紹介する「INPEXの取組」※8を追加して、2021年2月に対外開示しました。なお、「INPEXの取組」については原則として毎年1回アップデートすることとしています。

  1. ※8「気候変動対応の基本方針」及び「INPEXの取組」[PDF:1.25MB]

気候変動関連のガバナンス体制図

気候変動対応と役員報酬との連動

当社の気候変動対応については、「中期経営計画 2018-2022」に基づき、TCFD 提言に沿ったリスク管理や情報開示等に関し毎年定性目標を設定しており、その達成度の評価が担当役員の賞与に反映されます。また、代表取締役をはじめ他の取締役の賞与においても、当期純利益をベースに主要な事業運営の実績に加え、気候変動対応を含むESG 評価及びHSE パフォーマンス等を総合的に勘案して算定されています。

気候変動関連リスク及び機会の評価・管理

2020年度気候変動関連リスク及び機会の評価ワークショップ

各事業部のWGメンバーがオンライン会議を通じ、当社の低炭素社会シナリオをベースとして気候変動関連リスク及び機会について評価しました。

当社は、気候変動関連リスク及び機会の評価・管理を、原則として年次サイクルで実施しています。全社的な気候変動対応の推進は、経営企画本部経営企画ユニット内の気候変動対応推進グループが担っています。気候変動関連リスクに関しては、各部門を代表する30名ほどのメンバーで構成される「気候変動対応推進ワーキンググループ(WG)」が評価を実施して、予防及び低減措置を策定しています。

なお、リスク評価のプロセスは、国際的なリスク管理基準であるISO31000(2009)(図A)の手順に従っています。外部要因・内部要因をアップデートし、当社の状況をWGメンバーで共有した上で、リスクを特定し、その原因、予防措置、低減措置、及び残存リスクを分析(図B)し、その残存リスクを当社で作成した「TCFD提言対応リスク評価マトリクス」(図C)を使用して評価しています。

気候変動関連機会については、「今後の事業展開」に基づいて、水素・CCUS 事業開発室等の新部署の設置等を通して全社的に取り組んでいきます。これらの部署の担当者をWGメンバーに追加して、当社の経営方針における気候変動関連機会を効果的・効率的に評価・管理していきます。

なお、WGの検討結果については「INPEX の取組」としてCSR 委員会で審議され、社長決裁を経た上で経営会議・取締役会に報告する仕組みとなっています(図D)。

図A:ISO31000の手順

図B:リスク分析の手順

図C:TCFD提言対応リスク評価マトリクス

図D:気候変動関連リスク及び機会の評価・管理のプロセス

2020年度の気候変動関連リスクの評価対象、発生時期見込及び対策の状況

  リスク区分 リスクの評価対象 リスク発生時期見込 対策の状況




政策・法規制 
(Scope1排出量関連)
カーボンプライス制度の導入・強化によりコストが増加するリスク 中期
  • カーボンプライス政策動向のモニタリング
  • インターナルカーボンプライスをUS$35/tCO2-eからUS$40/tCO2-eへ引き上げ、ベースケース化によるプロジェクトの経済性評価の実施
技術及び市場
(石油ガス需要・価格の低下)
再生可能エネルギー・EV・電池のコスト低下、あるいは市場の低炭素エネルギー選好により、石油ガスの需要低減・価格低下が進行するリスク 長期
  • シナリオを活用した技術・市場動向のモニタリング
  • IEA WEO Sustainable Development Scenario(SDS)の油価・カーボンプライス適用によるポートフォリオの財務的評価
レピュテーション
(Scope1排出量関連)
Scope1排出量がステークホルダーから懸念されるリスク 短期
  • メタン排出原単位(メタン排出量÷天然ガス生産量)を現状の低いレベル(約0.1%)で維持
  • 2030年までに通常操業時ゼロフレア
  • 2050年ネットゼロ、2030年排出量原単位30% 以上低減目標の設定
  • 当社がオペレーターとして操業するイクシス液化基地にて、天然ガスから分離されるCO2の圧入・貯留の可能性を検討
  • 再生可能エネルギー事業の取組強化
  • 森林保全によるCO2吸収を推進
レピュテーション
(Scope3排出量関連)
Scope3排出量が注目され石油・ガス企業のイメージが悪化するリスク 中期
  • Scope3排出量の低減に向けたステークホルダーとのエンゲージメント
  • 天然ガスの開発促進・普及拡大
  • カーボンニュートラルLNGの販売
レピュテーション
(資金調達への影響)
投資家や金融機関から情報開示が不十分とみなされ、資金調達に悪影響を及ぼすリスク 中期
  • TCFD提言に沿った情報開示の推進





急性リスク 極端な気象現象が、操業施設に悪影響を及ぼすリスク 中期
  • オペレータープロジェクトに対して、IPCC※9第5次評価報告書RCP※108.5シナリオの21世紀半ばまでの平均気温上昇、降雨パターンの変化、海面上昇等の気候変動要素による操業施設のリスク評価の試行
  • ノンオペレータープロジェクトに対しても、物理的リスク評価の実施状況について2021年度中に検証
慢性リスク 長期的な平均気温上昇、降雨パターンの変化、海面上昇が操業施設に悪影響を及ぼすリスク 中期
  1. ※9Intergovernmental Panel on Climate Change
  2. ※10Representative Concentration Pathways

2020年度の気候変動関連機会の評価対象、実現時期見込及び対策の状況

機会区分   機会の評価対象 機会の実現時期見込 対策の状況
資源の効率に関する機会
エネルギー効率改善
生産プロセスにおけるエネルギー効率の改善 短期
  • エネルギー効率の高いプラント設計と綿密な設備保全計画及び日常的な保全活動
エネルギー源に関する機会
再生可能エネルギー電源の活用
再生可能エネルギー電源の生産プロセスでの活用 長期
  • 太陽日射の豊富なサンベルト地域に立地するプロジェクトでの太陽光発電利用の可能性を検討
製品及びサービスに関する機会
CCUS推進
上流事業のCO2低減に取り組み、よりクリーンなエネルギーを供給 中期
  • 新潟県等におけるCO2EOR※11実証
  • イクシスLNGプロジェクトでのCCS検討
水素事業の展開
水素社会の到来を展望し、水素製造・供給事業への展開 長期
  • 新潟県柏崎市水素製造・利用一貫実証プロジェクト構想
  • アブダビでのクリーンアンモニア事業
  • 海外でのカーボンフリー水素事業
再生可能エネルギー事業の拡大
国内外において、地熱発電事業や洋上風力発電事業の取組を加速 中期
  • 地熱:国内・インドネシアでの開発を検討
  • 風力:秋田着床式洋上風力、浮体式洋上風力の事業化を目指す
カーボンリサイクル
カーボンリサイクル技術の研究開発 長期
  • メタネーション:新潟実証設備等にて段階的にスケールアップ
  • 人工光合成:豪州ダーウィンに人工光合成パネルを設置
新分野事業の開拓
新分野事業の立ち上げの加速 長期
  • ドローン活用、メタン直接分解、カーボン素材事業の検討
カーボンニュートラルLNG
カーボンニュートラルLNG・天然ガスの販売の推進 中期
  • 国内外の取引企業等との連携を通じて販売を推進
市場に関する機会
天然ガスの拡販
グローバルガスバリューチェーンの構築 中期
  • 海外、特にアジアでのLNG受入基地事業、ガス火力発電事業、LNGバンカリング事業への参画を検討
  • 東京都西多摩郡瑞穂町のスマートエネルギー会社に天然ガスを供給
低排出エネルギー源の開発
天然ガス開発の促進 長期
  • インドネシアのアバディLNGプロジェクトを推進
  1. ※11Enhanced Oil Recovery
    石油増進回収。本レポートではEnhanced Gas Recovery(ガス増進回収)を含む

物理的リスク評価プロセスの整備

2018年度に物理的リスクについての評価プロセスを検討し、施設が所在するオペレータープロジェクトとノンオペレータープロジェクトの両方を対象とするロードマップを設定しました。2020年代の早い時期に全施設の評価を実施することを目指します。2019年度は当社の主要オペレーター施設を対象とした物理的リスク評価を試行しました。まず、日本の新潟県とオーストラリアのダーウィンを対象に、最も温暖化が進行するIPCC 第5次評価報告書のRCP8.5シナリオにおける21世紀半ばの平均気温上昇、海面上昇等の指標を公表外部データから特定しました。同データを利用し、国内及びオーストラリアの主要施設のリスクの特定を行いました。慢性リスクは、運転効率の低下等の影響が考えられますが、現状で施設の修繕等の必要性はないと評価しています。一方、急性リスクは、国内で増大並びに激甚化する自然災害について、国レベルで適応が進められる中、当社でも従前のリスク管理の枠組みの中で検討しており、具体的にはパイプラインのリスク評価、対応策の検討等を進めています。

また、当社の技術力強化として推進している技術ロードマップの中で気候変動対応タスクフォースを2019年7月に立ち上げました。同タスクフォースは、15名ほどの組織横断的な技術者メンバーで構成され、物理的リスク評価を実施しています。2021年度は、ノンオペレータープロジェクトにおける気候変動の物理的リスク評価実施状況を検証していきます。

物理的リスク評価のロードマップ

気候変動リスクの財務的評価

当社は以下2つの手法で気候変動リスクの財務的評価に取り組んでいます。

一つ目は、インターナルカーボンプライスによる当社の各プロジェクトの経済性評価です。2021年度より従来の感応度分析に代え、ベースケースとして適用した経済性評価を実施しています。これは、世界では既に120か国あまりが2050年ネットゼロ宣言を行っており、今後更なる気候変動関連政策強化に伴い、各国においてカーボンプライス導入が進むと思われるためです。当社ではIEA WEOの公表政策シナリオ(Stated Policies Scenario:STEPS)のカーボンプライスを参考にインターナルカーボンプライスを毎年レビューしています。2020年度には、IEA WEOのカーボンプライス見通しを反映し、インターナルカーボンプライスをUS$35/tCO2-eからUS$40/tCO2-eに見直しました。

二つ目は、当社の事業ポートフォリオの財務的評価です。IEA WEOのSustainable Development Scenario(SDS:世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求するパリ協定目標と整合的なシナリオ)の油価・カーボンプライスが、当社ポートフォリオに与える市場リスクの財務的評価です。IEA WEO のSDSが提示している油価とカーボンプライスの推移を、プロジェクトのNPV 計算に適用し、ベースケース適用のNPVからの変化率を、当社の事業ポートフォリオに対する影響として算出します。2018年度から社内での評価に活用していますが、前提の置き方等難しい点があるものの当社の事業ポートフォリオの財務的評価に有効な手法であることを認識しています。引き続き事業環境の変化を織り込みながら本手法の運用基準の深化及び当社の事業ポートフォリオの競争力向上に努めていきます。

財務的評価への2つのアプローチ

財務的評価手法 カーボンプライス政策が、プロジェクトに与える影響の財務的評価 IEA WEO Sustainable Development Scenario(SDS)の油価・カーボンプライス適用によるポートフォリオの財務的評価
指標 インターナルカーボンプライス適用によるNPV(ベースケース) IEA WEO SDSの指標価格適用によるNPV変化率(感応度分析)
取組状況 2021年度よりベースケース化 2018年度より実施

TCFD提言に沿った開示内容及び開示箇所