気候変動対応

基本的な考え方

当社は、パリ協定の長期目標達成に取り組む国際社会の現状を低炭素社会への移行期と捉え、気候変動対応を経営上の重要課題と認識しています。この課題に対処するためには、国際社会のあらゆる主体の行動が求められますが、特に政策的措置、技術開発、産業界への対応など長期にわたる取組が必要です。当社は石油・天然ガス業界の責任ある一員として、その役割を果たしていきます。パリ協定に基づく各国のルールを遵守し、石油・天然ガス及び再生可能エネルギーなどのエネルギー需要への適切な対応と温室効果ガスの排出削減という2つの社会的な要請にバランスをもって応えるべく、気候変動リスク及び機会を適切に評価・管理しつつ事業を推進していきます。

また、事業活動の低炭素化を推進するため、天然ガスの開発促進や再生可能エネルギーへの取組を強化するとともに、操業からの温室効果ガス排出を適切に管理し、排出されたCO2を回収・貯留するためのCCS※1の実用化に向けた技術開発を進めます。なお、気候変動関連の情報開示については、TCFD提言に沿って取組を推進します。ポジションペーパー「気候変動対応の基本方針[PDF:941KB]」を策定し(2015年12月発表、2018年7月改定)、WEB上に掲載しています。

  1. ※1CCS
    Carbon dioxide Capture and Storage
担当役員のメッセージ
橘髙 公久
取締役 常務執行役員
経営企画本部長

当社は石油・天然ガス開発企業としての責任ある役割を踏まえた気候変動対応を推進するため、2015年12月にポジションペーパー「気候変動対応の基本方針」(2018年7月改定)を発表しました。また、2018年5月に発表した「ビジョン2040」と「中期経営計画2018-2022」においても説明しているとおり、パリ協定の長期目標を踏まえた低炭素社会へ積極的に対応すべく、気候変動対応推進の体制強化とTCFD提言に沿った情報開示を持続的な取組として推進しています。

具体的には、ガバナンスについては、取締役会による監督体制の維持、関与の拡大を図っており、事業戦略に関しては、IEA※2 WEO 2℃シナリオを含むいくつかのシナリオへの対応力を評価した上で、ポートフォリオの検討材料の一つとしています。リスク及び機会の評価は、年次サイクルの評価・管理体制を維持し、そのプロセスから導かれる対策に取り組んでいます。温室効果ガス排出量管理については、パリ協定に基づく各国のルールを遵守しつつ、国際基準に沿った目標設定手法の検討に努めます。情報開示については、TCFD提言に沿って、必要な情報・データを特定の上、それらの収集プロセスを整備し開示内容の充実に努めて参ります。

また、これらの活動に業界のベストプラクティスを適時的に反映させるべく、国際的な石油・ガス業界のサステナビリティ推進団体であるIPIECAにExecutive Committeeのメンバーとして参加し、情報の発信と収集に努めています。

  1. ※2International Energy Agency
    国際エネルギー機関

TCFD提言への持続的な取組

TCFD提言に沿った開示内容及び開示箇所

気候変動関連のガバナンス体制

当社は、気候変動対応を経営上の重要課題と認識し、取締役会による監督体制の維持、関与の拡大を図っています。具体的には、気候変動対応の基本方針の決定を取締役会での決議事項としています。当社は2015年に「気候変動対応の基本方針」を発表し(2018年7月改定)、取締役会でこの基本方針を原則年1回レビューしています。また、2018年度に関連規程を改定し、気候変動関連のリスク及び機会の評価、並びに気候変動対応に係る重要な目標設定を経営会議での承認事項とし、承認後に取締役会に報告する仕組みとしました。なお、全社的な気候変動対応の推進は、経営企画本部経営企画ユニット内の気候変動対応推進グループが担っています。

気候変動関連のガバナンス体制図

気候変動対応と役員報酬との連動

当社の気候変動対応については、「中期経営計画2018-2022」に示すガバナンス体制、事業戦略、リスク及び機会の評価、温室効果ガス排出量管理並びに情報開示の取組項目に沿って定性目標を設定しており、その達成度の評価が担当役員の賞与に反映されます。

気候変動対応マイルストーン

気候変動関連リスク及び機会の評価・管理のプロセス

当社は、気候変動関連リスク及び機会の評価・管理を、年次サイクル(図A)の一環として実施しています。2018年度は、気候変動対応推進グループが事務局として作成した原案を、「気候変動関連リスク及び機会の評価プロジェクトチーム(PT)」のワークショップで検討・評価し、その結果を、経営会議、及び取締役会に報告しました。同PTは、各部門を代表する20名ほどのメンバーで構成する組織横断的なプロジェクトチームです。2019年度からは、上記のプロセスを発展させ経営会議の関与を深める予定です。リスク評価のプロセスは、国際的なリスク管理基準であるISO31000(2009)(図B)の手順に従っており、リスクを特定した上で、その原因、予防措置、対策措置及び結果を分析し、その結果を評価しています(図C)。

2018年度の気候変動関連リスクの評価対象、発生時期見込及び対策の状況

2018年度の気候変動関連の機会の評価対象、実現時期見込及び対策の状況

気候変動リスクの財務的評価

当社は以下3つの手法で気候変動リスクの財務的評価に取り組んでいきます。

一つめは、カーボンプライス政策導入・強化が、当社プロジェクトに与える政策・法規制リスクの財務的評価です。世界銀行の報告書※3によれば、パリ協定参加国のうち、96か国のNDCがカーボン価格政策(排出権取引制度や炭素税)を検討中か導入済と報告しています。当社ではインターナルカーボンプライス(US$35/tCO2-e)をプロジェクトの経済性評価に適用しています。なお、このインターナルカーボンプライスは、IEA WEOのカーボンプライスを参考に毎年レビューしています。

2つめは、2℃シナリオの油価・カーボンプライスが、当社ポートフォリオに与える市場リスクの財務的評価です。IEA WEOの2℃シナリオ(Sustainability Development Scenario)が提示している油価とカーボンプライスの推移を、プロジェクトのNPV計算に適用し、ベースケース適用のNPVからの変化率を、当社ポートフォリオに対する影響として算出します。2018年から試行しています。

3つめは、2℃シナリオにおける石油・LNGの需給見通しが、当社プロジェクトに与える市場リスクの財務的評価です。このリスクを評価するためには、将来の石油・LNGの供給量を予測するサプライコストカーブを活用する手法があります。横軸にプロジェクト別の将来の供給量(サプライ)をとり、縦軸にプロジェクト別の経済性(コスト)をとります。サプライコストカーブはグローバルに作成しますが、実際には地域別の地政学、政策、技術力、商習慣などを考慮する必要があります。これらの要因をどのように考慮するかを含め評価手法について検討を進めています。

  1. ※3World Bank – 2019 State and Trends of Carbon Pricing(June 2019)

物理的リスク評価プロセスの整備

2018年度は物理的リスクについての評価プロセスを検討し、オペレータープロジェクトとノンオペレータープロジェクトの両方を対象とするロードマップを設定しました。2020年代の早い時期に全施設の評価を実施することを目指します。2019年度は当社オペレーター施設を対象とした物理的リスク評価を実施していきます。その準備として日本の新潟県とオーストラリアのダーウィンを対象に、最も温暖化が進行するIPCC第5次評価報告書(AR5)のRCP8.5シナリオにおける21世紀半ばの平均気温上昇、降雨パターンの変化、海面上昇等の指標を外部データ※4から特定しました。

  1. ※4環境省『21世紀末における日本の気候』(2015)、気象庁『地球温暖化予測情報 第9巻』(2017)、及びClimate Change in Australia『Monsoonal North Cluster Report』(2015)

財務的評価への3つのアプローチ

当社の低炭素社会シナリオ

2040年までの低炭素社会に向けたエネルギー需要の見通しについて、当社は国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook(WEO)新政策シナリオ(IEA NPS)を基本シナリオとしつつ、市場原理に基づくコスト低下により再生可能エネルギーやEV(電気自動車)の需要が大幅に高まるシナリオ(技術進展シナリオ)、またパリ協定に基づく各国の気候変動政策が更に強化されるシナリオ(ウェイクアップシナリオ)を想定しています。これらにIEA WEO2℃シナリオ(IEA持続可能な開発シナリオ:IEA SDS)を含めて、低炭素社会への移行期における事業戦略の検討材料としています。

当社は、事業環境の変化をいち早く把握し、社会の動向に合わせた事業戦略の策定を目指します。

このため、主要なエネルギー関連シナリオで取り上げられる指標(EV普及動向、再エネコスト、世論動向など)、その他現実の社会状況をサインポスト※5として、年に一度、IEA WEOの更新時期に合わせて当社シナリオのレビューを実施し、今後の当社戦略「低炭素社会への対応戦略」の方向性を検討しています。

  1. ※5サインポスト
    将来のシナリオの展開方向を示唆する「早期のサイン」を指す。当社では、エネルギーミックスや、電化の進展、EVや低炭素技術の普及など複数の事項をサインポストとし、その動向を注視

IEA WEOシナリオの概要

IEA WEO 新政策シナリオ
New Policies Scenario(NPS)

IEA WEOの中心シナリオである「新政策シナリオ」は、現在発表済みの政策が実現されることを前提としたシナリオです。WEO2018の新政策シナリオによれば、2040年に向けて一次エネルギーの需要は引き続き伸び続け、このうち石油・天然ガスは全需要の53%を占めるとされます。再生可能エネルギー(水力、バイオマスを除く)が全需要に占める割合は、石油、天然ガスと比較して小さいものの、2040年までに2017年の需要量の約5倍の規模へと大きく成長する見込みです。

IEA WEO 持続可能な開発シナリオ
Sustainable Development Scenario(SDS)

IEA WEO「持続可能な開発シナリオ」は、「国連持続可能な開発目標(SDGs)」のうちエネルギー関連目標を2040年までに達成するシナリオです。世界規模で電化が進展し、温室効果ガス排出量が減少することで、パリ協定目標(「平均温度の上昇を2度以内に抑制し、1.5度以内に抑制する努力をする」)も達成します。

エネルギー効率性の向上により、2040年に向けて一次エネルギーの需要は減少します。一方、石油・天然ガスの全需要に占める割合は、2040年時点でも48%となっています。再生可能エネルギーは、2040年では2017年の需要量の約8倍に達します。

低炭素社会への対応戦略(Low Carbon Transition Plan)

IEA新政策シナリオからさらに低炭素社会に移行するシナリオにおいては、原油価格の大幅な上昇は見通しにくいと認識しており、「中期経営計画2018-2022」においては、油価は50〜70ドル/バレルの範囲内で推移し、緩やかに70ドル/バレルへ上昇するトレンドを想定しています。この間、当社は、石油・天然ガス上流事業のバレルあたりの生産コストを5ドル/バレル(ロイヤルティー除く)に向け削減し、原油価格50ドル/バレル継続時にも安定した事業運営が可能な体制を維持することを目標としています。

また、当社は事業の低炭素化を目指し、NPS、SDSいずれのシナリオでも堅調な需要が予想される天然ガスの開発促進や再生可能エネルギーへの取組を強化するとともに、操業からの温室効果ガス排出を適切に管理し、排出されたCO2を回収・貯留するためのCCSについては、実証試験プロジェクトに参加しています。

「ビジョン2040」においては、この低炭素社会への対応をさらに推進し、天然ガスの開発・供給の分野で、これまで国内における天然ガスサプライチェーンが主体であったところ、これを発展させ、グローバルガスバリューチェーンを構築し、日本やアジア・オセアニアを中心としたガス開発・供給の主要プレイヤーとなることを目指します。再生可能エネルギーの分野では、長期的にポートフォリオの1割を再生可能エネルギー事業とすることを目指します。また、CCSについても引き続き実用化に向けた技術開発を進めていきます。

このように、事業活動のいずれの分野においても低炭素化を図りつつ、2040年に向けて事業環境の変化に柔軟に対応できるポートフォリオを持つことで、持続的な企業価値の向上を図ります。

サプライチェーンへの取組

当社では「環境安全方針」で、「温室効果ガス排出管理プロセスに基づき、温室効果ガス排出の削減に努めること」を宣言しています。請負業者に関する管理マニュアル及び調達業務に関するガイドラインで、請負契約及び調達契約にこの宣言の遵守を求める条項を盛り込み、請負先及び調達先にもその遵守を求めています。

当社100%子会社インペックスシッピングが定期傭船しているLNG船からの温室効果ガス排出量を入手し、Scope3排出量として開示しています。これらのLNG船は、当社主要プロジェクトであるイクシスLNGプロジェクト等のLNGを輸送しています。

関連リンク