INPEX

|INPEXが目指すネットゼロカーボンの世界

「気候変動時代」の
パイオニアとして
責任果たす

上田 隆之
「気候変動時代」のパイオニアとして責任果たす
「気候変動時代」のパイオニアとして責任果たす

気候変動対応が求められる今、二酸化炭素(CO₂)の排出削減は避けては通れない課題だ。エネルギー開発大手のINPEXは排出するCO₂の正味の量をゼロにする「ネットゼロカーボン」社会の実現に向けた改革に取り組んでいる。気候変動対応の具体的な目標を策定し、その目標実現に向けた新たな事業分野への取り組みと組織改編、社員がこれまで培ってきた経験をさらに活用するための社内ベンチャー制度の創設など、時代の変化に対応した施策を次々と打ち出している。INPEXの目指す未来を上田隆之社長に聞いた。

企業活動による2019年度の
CO₂排出は
年間約800万トン、
2050年にはネットゼロに

−−今年1月にネットゼロカーボンへ向けた事業戦略を発表しました。改めてどのようにネットゼロカーボンを実現しますか。

 私たちの事業基盤である石油・天然ガス、特に天然ガスは、アジアなど経済成長に伴いエネルギーの需要が伸びている地域を中心に、引き続き重要なエネルギー源としての利用が見込まれます。こうした石油・天然ガスの開発や利用に伴うCO₂を大幅に削減しクリーンエネルギーの安定供給に努めながら、気候変動に対応したエネルギー転換と脱炭素社会への移行を積極的に進めて新しいエネルギーの未来をいかに切り開いていくのか。この難題に対して、会社としての答えをお示ししたのが「今後の事業展開~2050ネットゼロカーボン社会に向けて~」です。

 2019年度、当社の企業活動によって年間約800万トンのCO₂を排出しています。パリ協定の枠組みに則して、これを2050年にネットゼロとする「CO₂排出絶対量ネットゼロ」を具体的な目標としました。この目標を達成し会社の未来を切り開いていくために、これまで内外で培ってきた私たちの強みを最大限に生かせる5分野「石油・天然ガス事業のCO₂低減とCCUS(CO₂の回収・有効利用・貯留)推進」「水素事業の展開」「再生可能エネルギーの取組強化と重点化」「カーボンリサイクルの推進と新分野事業の開拓」「森林保全によるCO₂吸収の推進」に積極的に取り組みます。この5つの事業に対して、中期的に1バレル50~60ドルの油価を前提とした年間投資規模約2500億~3000億円のうち、200億~300億円程度の投資を計画しています。

ネットゼロカーボン社会実現に向けた
5つの事業の柱

ネットゼロカーボン社会実現に向けた5つの事業の柱:グラフテキスト

ネットゼロカーボン社会実現に向けた5つの事業の柱:グラフアイコン

ネットゼロカーボン社会実現に向けた5つの事業の柱

水素の製造から利用まで、
一気通貫プロジェクトで
水素社会を後押し

−−具体的には、どのような取り組みを進めていますか。

 まずは現在の事業基盤である石油・天然ガスの領域です。探鉱・開発・生産のあらゆる段階で省エネルギーやエネルギー利用の効率化を徹底した上で、操業中に排出されるCO₂を地中に圧入して大気中に排出しないCCS(CO₂の回収・貯留)・CCUSを推進します。既存の油田やガス田にCO₂を圧入すれば、CO₂の圧力でガスや石油の増産にもつながります。CCS・CCUSという付加価値を加えることは時代が要請する必須の取り組みであると考えます。また、水素は天然ガスを原料とすることから、天然ガス事業との親和性が高く、いわば天然ガス事業の延長線上、あるいは進化形ともいえるもので、この分野にも積極的に取り組みます。国内で生産した天然ガスを水素とCO₂に分離し、取り出した水素を発電事業や水素ステーションへ供給する製造から利用までの一気通貫プロジェクトの実証を新潟県で始める予定です。分離されたCO₂もCCUSによって当社保有のガス田に圧入してガスを増産するので、資源の有効利用と同時にカーボンフリーな水素を新しいエネルギーとして供給し、水素社会の実現を後押しします。

 再生可能エネルギーの分野では、地熱発電と洋上風力発電に注力していきます。日本の地熱資源量は世界第3位で、高いポテンシャルがあります。地熱発電では石油や天然ガスの上流事業と同様に井戸の掘削技術が求められ、洋上風力発電ではこれまで私たちが海上に石油・天然ガス施設を建設・操業する中で得られたノウハウが生かせるので、どちらも私たちの強みが発揮でき、既にインドネシアでは単一契約としては世界最大規模のサルーラ地熱発電IPP事業に参画して経験を積んでいます。国内においても複数の再生可能エネルギーの事業化を検討しています。

国内(新潟県柏崎市)での水素製造・利用一貫実証プロジェクト構想:テキスト

国内(新潟県柏崎市)での水素製造・利用一貫実証プロジェクト構想:フロー

国内(新潟県柏崎市)での水素製造・利用一貫実証プロジェクト構想

「人工光合成」
「カーボンニュートラルLNG」
など新分野も開拓

 少し先の未来を見据えた新分野の開拓では、「メタネーション」と「人工光合成」の技術開発を進めます。CO₂を有効利用する一つの方法として、水素と反応させて都市ガスの主成分であるメタンを合成する「メタネーション」の基盤技術を早期に完成させ、2030年頃のメタンの商業生産を目指しています。反応させる水素を、クリーンな水素にできれば、CO₂の排出量を減らしつつクリーンな都市ガスを増産できることになります。「人工光合成」は太陽光の力を利用して水から水素を取り出す技術ですが、今年1月に豪州北部準州ダーウィン市で検証実験を始め、商用化を目指していきます。

 森林事業支援によるCO₂削減も重要だと認識しています。豪州でのユーカリの植林・管理や森林火災管理などのプロジェクトに加え、インドネシアでRimba Raya REDD+の森林保全プロジェクトも支援しています。既に5年間で約500万トン分のCO₂クレジットを得る契約をしており、生物多様性の維持や地域社会の生活基盤の整備に貢献しながら、お客様が排出するCO₂をあらかじめカーボンクレジットでオフセットした「カーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)」の販売を行ってまいります。

※森林減少・劣化の抑制によるCO₂排出削減を意味するREDD(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation)に、森林管理による森林劣化防止や植林などによる炭素ストックの積極的増加を加えたカンクン合意(2010年)の定める概念

「人工光合成」「カーボンニュートラルLNG」など新分野も開拓

組織改編、
ベンチャーとの協業など
社内外の知見や
技術フルに生かす

−−気候変動やESGなどINPEXを取り巻く事業環境は激変しています。どう対応しますか。

 事業環境が変わっていったとしても、エネルギーが世界中から求められ続けることは変わりません。多様なエネルギーをよりクリーンに、より安定的に供給するために、社内の組織改編も進めています。まず水素事業の推進とCCUSの技術検討を推進するために、今年3月に社長直轄の組織「水素・CCUS事業開発室」を新設しました。例えば水素は、これまで地域ごとのプロジェクトとして取り組んでいましたが、水素・CCUS事業開発室がノウハウや知見を集約しながらヘッドクオーターとしての役割を果たすことで、さらに積極的に事業を展開していきます。また、新たな分野への取り組みを強化するという意味合いも込めて、「再生可能エネルギー・電力事業本部」は「再生可能エネルギー・新分野事業本部」に改編しました。これらの分野に携わる人材は、特にやる気のある若い人を社内公募や社内副業の制度を活用して集めていきます。

 さらに、研究開発型ベンチャーとの協業や産学官連携の強化を通して、外部の知見を今後も積極的に取り入れつつ新規事業を推進していきたいと考えています。「メタネーション」や「人工光合成」も、産学官連携プロジェクトとして基礎技術の開発が進められている分野です。また、今年2月には、ドローン専門スタートアップ企業であるテラドローンへの出資と協業を決めましたが、これは私たちにとっては初の異業種スタートアップへの出資で、ドローン技術を駆使し天然ガスの貯蔵タンクやパイプラインなどの設備点検を効率化するだけでなく、将来的にはドローンが集めたデータをAI(人工知能)が解析し、施設メンテナンスの時期の判定までを自動化することも目指しています。今後は、デジタル技術とエネルギー事業の融合化を積極的に進めるとともに、メタンの直接分解技術、CO₂を原料として活用するカーボン素材事業など、さまざまな新規事業にベンチャー精神をもって取り組んでいきたい、と考えています。

組織改編、ベンチャーとの協業など社内外の知見や技術フルに生かす

社名変更は、
エネルギー
トランスフォーメーションの
パイオニアになる意思表示

−−2050年にINPEXはどのような会社でありたいとお考えでしょうか。

 「今後の事業展開」の発表に併せて、2021年4月1日から当社の和文商号である「国際石油開発帝石株式会社」を「株式会社INPEX」に変更し、これまで主に海外で使用してきたINPEXをグローバルブランドとして展開していきます。3000人以上いるグループ社員の一体感を高めると同時に、グループ全体の企業価値をより向上させたいと考えています。また、社名変更には、INPEXとは、エネルギートランスフォーメーション(エネルギー転換)におけるパイオニアになる(Innovative Pioneer of Energy Transformation)という意味を込めています。今後とも石油・天然ガスから水素・アンモニア・再生可能エネルギーなど多様なエネルギーの開発・生産・供給を持続可能な形で実現することを通じて、日本をはじめとする世界のエネルギー需要に応えながら、2050年に向けての責任を果たしていきます。

上田 隆之

上田 隆之(うえだ・たかゆき)
INPEX社長
1980年東京大学法学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局長、資源エネルギー庁長官、経済産業審議官などを歴任し2016年退官。国際石油開発帝石に転じ、副社長を経て2018年社長就任。