(写真左)眞鍋かをりさん(聞き手) (写真右)上田隆之社長

(写真左)眞鍋かをりさん(聞き手) 
(写真右)上田隆之社長

「二刀流」で挑む
ネットゼロカーボン社会の実現
エネルギー転換期の
パイオニアを目指す

ネットゼロカーボン社会の実現に注力し、Energy Transformation「エネルギー転換期」のパイオニアを担うINPEX。昨年1月、「今後の事業展開~2050ネットゼロカーボン社会に向けて~」を、また、今年2月には2030年・2050年にINPEXのあるべき姿を示した「長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision @2022)」を発表。石油や天然ガスのよりクリーンな形での安定供給と合わせて、水素や再生可能エネルギーなど温暖化ガス排出量削減に資するネットゼロ5分野の展開を進める姿勢を明確にした。「INPEX~エネルギーに新しい風」VOL.2上田隆之社長インタビューでは、INPEXが描くエネルギーの未来像についてタレントの眞鍋かをりさんが聞いた。

激しい環境変化に対応
9年間で最大1兆円を
脱炭素事業に投資

昨年、今年と立て続けにエネルギーの未来について発信しています。最新の「INPEX Vision @2022」はなぜ今このタイミングで策定したのですか。

第一に、環境が大きく変わってきたということです。4年前の2018年に、2022年までの中期経営計画と「ビジョン2040」という長期戦略を策定し、そこにも再生可能エネルギーの取り組み強化は盛り込んでいました。しかしその後、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う石油や天然ガスの需要低下と油価暴落、さらには世界的な環境意識の高まりと脱炭素の流れの加速と、短期間に社会情勢や事業環境が大きく動きました。このめまぐるしい変化の中で、改めてエネルギーの未来と当社のあるべき姿を見つめ直す必要があると判断したのです。

そして昨年「今後の事業展開~2050ネットゼロカーボン社会に向けて~」を発表しました。企業活動による当社の二酸化炭素(CO2)排出は、年間約800万トン(2020年度実績)ですが、それを2050年にはネットゼロにするという目標を掲げました。この目標達成に向けて、節目となる2030年に当社が目標とする具体的な数値を示したのが今回の「INPEX Vision @2022」です。多様なエネルギーをクリーンな形で安定的に供給し続けていくために、これからの9年間で何を成し遂げるべきかをまとめています。

多様なエネルギーということは、事業の柱である石油や天然ガスを含めて、ほかにも事業を展開するということでしょうか。

石油や天然ガスの徹底したクリーン化と合わせて、CO2排出削減につながる「ネットゼロ5分野」に注力します。いわば「二刀流」ですね。新しいクリーンエネルギーとして期待されている「水素・アンモニア」、化石燃料の利用などで当面は排出されるCO2を大気中に放出しない「CCS(CO2回収・貯留)・CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)」、「再エネ電力」、メタネーション等の「カーボンリサイクル事業や新分野事業」、そして「森林」の5分野での事業を拡大するために、9年間で最大約1兆円をこのネットゼロ5分野に投資することを計画しています。

2050年ネットゼロへ挑戦

「ネットゼロ5分野」
2030年の達成目標を具体的に設定

具体的にはどのような目標を設定したのでしょうか。

「水素・アンモニア」は、現在計画している実証プラントで年間700トンを生産する予定ですが、2030年頃にはその約150倍の年間10万トンまで生産能力を拡張する計画です。この水素やアンモニアはブルー水素と呼ばれ、当社が生産する天然ガスから製造できるのですが、製造過程でCO2が出てきます。「CCUS」技術は、そのCO2をそのまま大気に放出することはせずに、地下の油ガス田に圧入するCO2排出削減の技術です。同時に石油や天然ガスの増産にもつながる取り組みで、水素製造との一貫事業として技術開発と事業化を推進します。CCS・CCUS分野では、現在は実証で年間6000トンのCO2地下貯留を2030年ごろにはこの約400倍となる年間250万トン以上にして、2050年には事業の収益化を実現したいと考えています。もちろん、CO2を出さないグリーン水素やクリーンアンモニアを作る事業の展開も並行して検討します。

最近よく聞く「水素社会」がいよいよ現実的になるということですね。

はい。そしてグリーン水素を製造する際の大事な要素でもある「再エネ電力」では、洋上風力発電と地熱発電に特に注力し、現状では500MW(メガワット)の発電容量を2030年には1ー2GW(ギガワット)規模までに拡大し、この分野での主要なプレーヤーになることを目指しています。

ルフタダウネン洋上風力発電所(オランダ) ルフタダウネン洋上風力発電所(オランダ)

ムアララボ地熱発電(インドネシア) ムアララボ地熱発電(インドネシア)

洋上風力発電についても最近ニュースなどで頻繁に見るようになりました。トレンドなのでしょうか。

日本は山が多いので、太陽光発電パネルの設置場所が限られます。風力発電に使う風車も陸上では設置場所が限られますし、日本の近海は欧州と違って遠浅の海岸が少ないため、風車を海底に設置する着床式は設置場所が限られます。ある程度の水深があっても風が強い沖合に風車を設置する浮体式であれば、日本を囲む広い海を活用できるのではないかと考えています。INPEXは、海底ガス田開発で海上に浮かぶ設備を造って操業してきた実績もあるので、この技術を浮体式洋上風力発電にも生かせるはずです。このように、当社の既存技術の活用と、新技術の開発を推進するための機関「INPEX Research Hub for Energy Transformation(I-RHEX)」も当社の技術研究所に設置しました。再エネだけではなく、水素・CCUS、カーボンリサイクル等、ネットゼロ5分野につながる強固な技術基盤の整備も強力に推進します。

今までの取り組みが応用できる分野を拡大していくということですね。

社内ベンチャー制度や国内外スタートアップ・大学などとの協業を通じた新事業の検討ももちろん積極的に進めますが、これまで実証実験を進めてきたカーボンリサイクル等の新技術も着実に事業化を進めます。CO2を水素と反応させることで都市ガスの主成分であるメタンに変換して利用する「メタネーション」もカーボンリサイクル技術の一つです。2030年頃には、約20万世帯で使用する量に相当する液化天然ガス(LNG)換算年間6万トン程度の合成メタンを天然ガスと同じように当社のパイプラインネットワークを通して供給できるようにしたいと考えています。この合成メタンの生産能力は、新潟県長岡市にある当社の越路原プラント内の現状の実証プラントの約25倍になります。

また、「森林」保全事業のサポートを継続し、大気中のより多くのCO2が光合成によって吸収されるようにします。CCS・CCUSなどに加えて、森林の力を借りて得た「クレジット」を活用して排出量ネットゼロを目指します。現在はインドネシアのRimba Raya REDD+プロジェクトから年間約100万トン分のクレジットを得ていますが、2030年にはサポートだけではなく実際に森林事業にも参画し、取得するクレジットを年間200万トンに倍増する計画です。取得したクレジットは自社排出量の削減だけではなく、カーボンニュートラルLNGやカーボンニュートラルガスとしてお客様に供給するクリーンエネルギーにも活用します。

上田隆之社長

上田隆之社長

海外の先行プロジェクトに参画し、
ノウハウを他地域で横展開

「ネットゼロ5分野」は主に国内のプロジェクトとして進めるのでしょうか。

INPEXでは、豪州・アブダビ・東南アジア・日本・欧州の5つのエリアを「コアエリア」としています。例えばアブダビでは石油・天然ガス開発事業を進めていますが、そのつながりで水素・アンモニア事業やCCUS事業も進んでいます。風力発電はオランダなど欧州で特に盛んです。欧州では石油・天然ガス事業で使われる施設の電力を再エネ電力にして、上流事業のさらなるクリーン化を実現しています。それぞれの地域で進んでいるプロジェクトに参画しながら、得られたノウハウを国内や他のコアエリアでも生かすことで、経営資源を集中しながら事業を効率的に展開しようとしています。

イクシス陸上ガス液化プラント(豪) イクシス陸上ガス液化プラント(豪)

生産施設から望むハイウインド・タンペン洋上風力発電(ノルウェー)完成予想図 生産施設から望むハイウインド・タンペン洋上風力発電
(ノルウェー)完成予想図

新しいエネルギーが私たちの生活を支えるようになりますね。

水素や再エネ等の新しいエネルギーに転換していこうという流れは確実にあります。一方で、世界的にはエネルギーの需要が増加しているため、新しいエネルギーに加えて、石油や天然ガスも転換期のエネルギーとして必要とされています。生産工程の効率化を進め、排出されるCO2を減らしつつ、CCS・CCUSなどと組み合わせて徹底したクリーン化を追求します。いかにクリーンに石油・天然ガスを使いながら、新しいエネルギーへとシフトしていくか、当社がエネルギー転換期を先導する役割を果たしたいと思っています。それがエネルギー転換期のパイオニアとしての責任でもあると思っています。

お話を伺って、エネルギーの転換がどう進んでいくのか具体的にイメージできるようになりました。INPEXさんは、まさに「新しい風」を吹かせる役割を担っているのですね。子どもたちの将来のためにも、楽しみにしています。

聞き手 眞鍋かをりさん

聞き手 眞鍋かをりさん