当社グループでは、安全な操業を徹底するために、コーポレートおよび国内外の各オペレーション事業体において、さまざまな取り組みを行っています。
2010年度も前年に引き続き、経営層の国内操業現場への訪問とHSEの講話を行い、現場では従業員および作業員の安全意識が着実に向上していることが確認できました。また、OGP(国際石油・天然ガス生産者協会)で集計されている安全データを参考に、当社グループの数値目標を設定し、2010年度はその数値目標を達成することができました。
2010年4月のメキシコ湾で発生した他社の海洋での暴噴事故を受けて、指針の見直しなどに着手しました。また、設計段階のプロジェクトに対しては、HSEに関するレビューを実施しました。
各オペレーション事業体では、操業国とオペレーションの実情にあわせた安全活動を実施しています。国内オペレーション事業体では、コントラクターHSE管理に関して、工事立ち会いの強化やHSE計画書に従った安全管理の徹底などを推進することにより、関連する事故・災害が大幅に減少しました。海外のオペレーション事業体では、地質調査や掘削作業などそれぞれのオペレーションに応じた安全への取り組みを推進しています。

当社グループでは、事故災害やニアミスが発生した場合には、「HSE事故報告・調査要領」に従って、事故の概要、事故原因そして再発防止策からなる事故報告書を作成します。当該報告書は、すみやかに本社に提出され、本社から、他のオペレーション事業体に水平展開され、事故の再発防止を図っています。
また、最新のHSE活動やトピックスをまとめたSafety Highlightsを毎月発行し、従業員に広くHSE文化が根付くよう努めています。
当社グループでは、2008年度から「HSE関連データ管理要領」に従ってHSE関連データを収集しており、このうち災害発生状況のデータは、当社が会員となっているOGPの安全指標に合わせて、定義しています。
当社グループではこれまでに引き続き、HSEマネジメントシステムを整備するとともに、当システムの浸透を図り、安全対策に取り組んでいます。2010年度の実績は、2009年度に比べ、休業災害件数および医療措置災害件数ともに減少しました。また、それに伴い、災害発生頻度についても、大幅に減少しました。これは国内オペレーション事業体を中心に災害防止への取り組みを徹底した成果と考えています。具体的な取り組みとしては、工事における立会業務の実施や、チェックシートへの記録の徹底など、コントラクター管理を強化するとともに、コントラクターにもHSE計画書の作成を依頼し、計画書に基づいた工事管理を行うなど、コントラクターと一体となったHSE管理の充実を図りました。
今後もさまざまな活動を通して災害防止への取り組みを徹底していきます。
| 死亡者数 | 休業災害※1 | 不休災害※2 | 医療処置※3 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 2008 | 従業員 | 0 | 3 | 1 | 7 |
| コントラクター | 2 | 4 | 5 | 23 | |
| 全体 | 2 | 7 | 6 | 30 | 2009 | 従業員 | 0 | 0 | 1 | 3 |
| コントラクター | 0 | 9 | 3 | 13 | |
| 全体 | 0 | 9 | 4 | 16 | |
| 2010 | 従業員 | 0 | 2 | 0 | 2 |
| コントラクター | 0 | 3 | 0 | 2 | |
| 全体 | 0 | 5 | 0 | 4 |
※1 傷害を受けた翌日以降、休業したケース(LWDC)
※2 傷害を受け、翌日以降、作業制限を受けたケース(RWDC)
※3 医療専門家による治療を要したケース(MTC)

当社グループでは、業務に従事するすべてのコントラクターに当社の環境安全方針を十分に理解してもらうとともに、当社グループとコントラクターが一体となって、事故の発生防止と環境負荷の低減に努めています。国内外のオペレーション事業体では、コントラクターに対するHSE管理方法を具体的に定めた「コントラクターHSE管理要領」に基づき、操業国やプロジェクトの特殊性を反映させて独自に定めた仕組みの運用を進めています。
現場では、工程会議や施工要領説明会、作業前ミーティングなどを通して、コントラクターとのHSEに関するコミュニケーションを強化し、より安全に工事が進められるよう取り組んでいます。
コントラクターの安全管理は、当社グループの重点目標の一つであり、今後もさらなるレベルアップを図ります。

2010年5月から7月初めにかけて、福島県沖合約40km、水深154mに位置する磐城沖石油開発のプラットフォーム撤去作業を、休業災害日数ゼロで完了しました。
これは、クレーン船の動員前に実施した作業請負会社との周到なリスク評価作業や、プラットフォーム上での作業責任者および作業員参加による作業実施前安全確認など、種々のHSE活動の成果と考えています。
海象条件にも恵まれ、建設よりも困難と言われる撤去作業を無事終えることができました。
当社グループの国内外のオペレーション事業体では、独自の安全管理活動を行い、安全操業に努めています。
ベネズエラでは、日本で根付いているヒヤリハット活動※を適用し、安全管理活動を推進しています。また、インドネシアの地質調査プロジェクトでは、事前にHSE計画書を作成し、それに基づいて調査活動を実施しました。国内では、業務上の交通事故削減を目的に、ドライブレコーダーを搭載して安全運転を確保するという取り組みも行っています。今後は、各事業体で実施している安全管理活動を水平展開し、全社的な取り組みに拡大していく予定です。
※ヒヤリハット活動:人的および物的被害を伴わないが、作業中にヒヤリとしたりハットした事象を記録し、共有することで事故を防止する活動。
ピアレビュー
現在インドネシアのジャカルタでは東京の事業本部・技術本部と連携し、アバディガス田開発のための基本設計作業の準備を進めています。開発計画は浮体式LNG生産設備を洋上に浮かべるという先例のないコンセプトに基づくもので、現場が遠隔海域であること、浮体構造という限られた空間に炭化水素の処理設備を集約的に高密度で配置する必要があることなど、特殊な事情に起因するリスクも想定しておく必要があります。こうしたリスクに対する設計への配慮が間違いなく行われるような設計仕様の完成を目指しています。
一例としては、東京の技術本部からだけではなく、社外からも構造、設備やHSEなど各分野の専門家がジャカルタに集まり専門家との意見交換を行う「ピアレビュー」という機会を設けていることが挙げられます。これにより、基本設計作業を進めるのに十分な設計段階での配慮が取られているかどうかを確認しています。
当社のアジアユニットでは、アジア地域における探鉱活動の一環として、2010年6月から7月にかけてインドネシア東部のタニンバル諸島にて地表地質調査を行いました。タニンバル諸島は美しいサンゴ礁に囲まれた自然豊かな島々ですが、点在する集落は独特の風習と文化を有し、十分な医療は普及しておらず、風土病の感染リスクも懸念される地域でした。
ヒヤリハット活動は、国内の事業所では一般に普及している安全活動ですが、海外の現場ではあまり導入されていませんでした。
ベネズエラの生産現場では、日本人技術者による継続的な働きかけにより、現地作業者が率先してヒヤリハット報告書を提出する体制が整備されています。ヒヤリハット報告書には、写真や報告者の自筆のイラストを付記するなど工夫を凝らし、誰にでもわかりやすい内容としています。報告書をもとに、従業員同士での議論を繰り返すことで、現場の安全意識を高めています。
2010年4月20日、米国メキシコ湾沖合の他社の坑井掘削現場にて、石油掘削リグが爆発炎上し、11名の死者と大量の原油がメキシコ湾全体に漏洩、流出するという重大な災害が発生しました。約3ヵ月後に、坑井からの原油の流出は完全に封じ込められましたが、米国規制当局は、現在も事故の原因調査を継続中です。
当社においては、かかる調査の推移を見極めつつ、OGP(国際石油・天然ガス生産者協会)の活動を通じた大手石油会社の対応状況の把握とともに、坑井作業の中心的な役割を担う掘削コントラクターの選定方法やコントラクターのHSE管理のあり方、坑井掘削設計基準、坑井制御指針書、さらには油濁防止対応計画の内容について検討、見直しを進め、海洋での暴噴事故が決して生じないよう努めています。
当社グループでは、「危機対応マニュアル」ならびに「コーポレート危機対応マニュアル」に従い、緊急事態レベル3(重大な事件・事故・災害により、当社の事業継続に著しい悪影響および社会的責任を果たすうえで重大な障害が予測される事態)の事象となった場合に、本社に「コーポレート危機対策本部」を設置し、対応します。
緊急事態となった操業現場に設置される「オペレーション事業体緊急対策本部」と連携し、外部情報の収集、社内外への情報発信、緊急時対応、医療措置や避難などに必要となるリソースの手配、セキュリティ確保、家族対応等を実施します。この度のエジプト、リビアの社会情勢悪化時、さらには東日本大震災の発生の際にも人命最優先の方針のもと、危機管理を実践しました。

原油タンク爆発火災危機対応訓練の様子
国内オペレーション事業体では、年間計画に基づき緊急時対応訓練をオペレーション事業体が単独で、また本社と連携した形で定期的に実施しています。
長岡鉱場における訓練では、越路原プラントにおける重大災害(原油タンクの爆発・火災)を想定し、災害が発生した場合に災害現場での初動対応が迅速かつ円滑に実施できるか、さらに現地対策本部を迅速に立ち上げ、国内事業本部緊急対策本部やコーポレート危機対策本部への情報収集・伝達および連携、復旧活動が確実に実施できるかどうかを検証しています。そして、訓練終了後には、参加者全員による反省会を行い、より的確な対応について意見を出しあい、次回の訓練に向けて評価・改善しています。
当社グループが販売する石油製品は、国内で産出した原油を原料とし、当社グループの精製会社にて精製した各種石油製品です。精製された石油製品は、一時貯蔵されたのち製油所または製油所近隣の出荷基地よりタンクローリー車または船舶を輸送手段として、各取引先および需要家へ出荷しています。 当社グループでは、出荷する石油製品の安全性について、関係法規の遵守はもちろんのこと、これに加えて当社グループで独自に設けた安全基準・製品規格に基づき、精製・貯蔵・出荷・輸送の各過程において厳しくチェックを行い、お客さまに安心して使っていただける製品を提供するための安全管理体制を構築しています。
当社グループは、当社のマークを掲示しているサービスステーションを新潟県・長野県において展開しており、これらサービスステーションを対象に、石油製品の拡販や固定客の確保、顧客サービスの拡充を目的とした「統一サマーキャンペーン」を2005年度以来継続して実施しています。キャンペーン期間中にご来店いただいたお客さまにはアンケート調査にご協力いただき、お客さまの特性(年齢構成・性別など)やサービスステーション利用に対する志向、顧客サービスに対する感想・要望などの多岐にわたる質問内容を集計し、結果についてはサービスステーションを運営する特約店やスタッフと共有化し、今後の運営や顧客満足度の向上に役立てています。
当社は、サービスステーションとの協調・連携を保ちつつ、今後もこうした活動を通じて顧客のニーズやサービスステーション運営環境の傾向を的確に把握することで、地域社会に根差したよりよいサービスステーションの在り方を追求していきます。

パイプライン建設本部
群馬建設事業所
コーディネーター
大橋 徹
パイプライン建設におけるリスク低減を目指して
パイプライン建設工事は、長距離の区間に、さまざまな工事が点在して行われるため、HSE管理の目が届きにくく、事故・災害が発生することがあります。そこで、コントラクターが決定した時点で、当社のHSE要求事項を満たしたHSE計画書の提出を依頼し、HSE管理を行っています。
その一環として、作業ごとにコントラクターとともにHSE要領書の検討会を開催し、リスクを洗い出し低減策を講じた後に工事に着手しています。また、パトロールをコントラクターとHSE担当との合同で実施し、HSE教育および管理が計画通り実行されているかを確認しています。
このように作業現場における危険箇所の除去や設備の改善を日常的に行うことで、無事故、無災害での完工を目指しています。

LNG受入基地建設本部
直江津LNG受入基地建設事業所
コーディネーター
世良田 茂
LNG 建設本部におけるコントラクター管理
直江津LNG受入基地建設プロジェクトでは、LNGタンク、プラント設備、桟橋、パイプラインの工事ごとにコントラクターが異なるため、これらを同時に管理する必要があります。例えばLNGタンク工事では、高さ40mのコンクリート製防液堤を施工する土木工事コントラクターと、内部のタンク本体を施工する機械工事コントラクターが同じエリア内にて並行して工事を行っており、またLNGタンク周囲ではプラント設備コントラクターも同時に工事を行っているため、各工事のコントラクター間で十分な工事調整を行うことで同時進行する工事の安全管理に万全を期しています。
また最盛期には1,000名規模の作業員が従事するため、サブコントラクターを含む全ての人員の安全管理も重要となります。そのためHSEマネジメントシステムを活用したリスクアセスメントの実施、安全設備の設置、施工要領の作成、サブコントラクターへの作業手順の周知、現場安全パトロール、不具合項目の是正というA-PDCAサイクルを機能させた総合的な安全管理を実践しています。その結果、工事開始から2年以上にわたり無事故無災害を継続しています。

国内事業本部
生産ユニット
河野 啓二郎
長岡鉱場におけるコントラクター管理とHSE 意識の向上
長岡鉱場では、年間100件以上の工事に多くのコントラクターがかかわっています。安全操業にはコントラクターの管理が重要になり、当鉱場では鉱場用の管理マニュアルを作成し、HSE計画書などの文書のほか、安全作業ガイドライン作成、作業許可制度導入などにより徹底した安全管理に努めています。また鉱場従業員のHSE意識の向上を目的に、HSEポイント登録制度を導入して、従業員一人ひとりが積極的、継続的にHSE活動に取り組んでいます。「ゼロ災害」「安全」は、ゴールではなく継続することが重要です。長岡鉱場では今後も全員一丸となってコントラクター管理に取り組んでいきます。

ヒューストン事務所
吉本 和人
スリナム掘削現場における暴噴事故対策指針の活用
「安全操業第一」は、掘削技術者にとって当たり前かつ最も重要な言葉です。これを実現させるために私たちスリナムチームが行った活動のひとつに、DWOP(Drill Well On Paper)が挙げられます。DWOPとは、各分野のエンジニアを一堂に招集し、計画している井戸のデザインが安全面の観点から最適なものかどうか検証を行うと同時に、潜んでいる危険源の抽出も行うことです。その結果を掘削手順書の作成に反映しました。

