CSR - CORPORATE SOCIAL RESPONSIBILITY -

気候変動への対応

環境負荷低減に資する技術開発

CO2回収・貯留(CCS)研究を推進

 地球温暖化の主要因であるCO2の大気中への排出量を削減するため、火力発電所や製鉄所などの大規模発生源から排出されるCO2を分離・回収し、これを長期間にわたり地中に貯留するCCS技術が世界的に注目を集めています。 当社グループでは、2000年より(財)地球環境産業技術研究機構の長岡CO2地中貯留実証プロジェクトに参画するとともに、2008年に設立された日本CCS調査株式会社の各種調査事業に協力し、CCS普及に向けた調査・研究を推進しています。

 CCSが将来的に広範に普及していくための必要条件の一つとして、CO2分離・回収、および地中貯留のためのCO2昇圧等に要するエネルギーおよびコストの低減が挙げられます。当社グループでは、既存の技術よりもエネルギー効率の高いCO2分離・回収技術の一つとして、日揮株式会社および独BASF社が共同で開発したHiPACT(High Pressure Acid-gas Capture Technology)技術に着目し、2010年8月~9月にかけて、両社と共同で当社南長岡ガス田越路原プラントにおいて同技術の実証試験を実施しました。本実証試験は、実際に稼働中の天然ガスCO2分離・回収装置を使用して実施され、当初の想定通りの省エネルギー性能を確認しています。

 今後、CCSの普及を通じてCO2の排出削減を実現するためには、上記のエネルギー効率やコストの問題以外にも数多くの課題があります。当社グループでは、当社独自の環境負荷低減への取り組みに加え、産学官を交えた広範な協力関係を通じて、CCSを含む地球温暖化問題への対応に積極的に取り組んでいきます。

CO2地中貯留の模式断面図

アブダビ沖での「CO2 EOR共同研究」

 当社グループは、2010年3月から約2年間の予定で、アブダビ沖の大規模な海洋油田(下部ザクム油田)を対象とするCO2圧入による原油回収率向上技術( CO2 EOR)(EOR:Enhanced Oil Recovery)の研究を(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で実施しています。

 2010年度は、油層流体と CO2による流体試験※1、最初のCO2圧入によるコア掃攻実験※2を実施しました。また、流体モデル※3を作成し、パイロットエリアの選定を含むシミュレーションスタディ※4の一部を実施しました。2011年度は、追加の CO2圧入によるコア掃攻実験、アスファルテン関連の流体試験※5、継続してシミュレーションスタディを実施し、良好な結果が得られた場合には、パイロットテスト実施計画を策定する予定です。

※1油の容積、密度、粘性が、圧力、温度の変化によってどの様に変わるかを測定する試験
※2油層中の岩石(コア)を採取して、実験室にてコアを油・水・ガスで満たし地下の状態を再現し、水・ガス等を圧入して回収率を測定し、油・水・ガスの挙動を確かめる実験
※3油・ガスの組成から、圧力、容積、温度、密度、粘性を予測する計算式
※4計算機を用いて油・水・ガスの挙動を予測し、問題を解決すること
※5圧力、温度の変化、または、ガスとの混合によって油から個体分が析出する条件等を測定する試験

光触媒によるメタン生成

 当社グループは、次世代エネルギーの必要性が高まっている時代の中で、低炭素社会の実現に向けた技術開発に注力しています。低炭素技術開発はさまざまな方法が検討されていますが、当社グループは、CO2の削減を直接的に行うことができるCO2有効利用技術の開発に取り組んでおり、現在、CO2と水からメタンを生成する光触媒の研究開発を進めています。人工光合成は夢の技術と言われていますが、光触媒によるメタン生成研究のこれまでの結果では、メタンが生成され、また、付加価値の高い有機物の副生も確認されました。この技術が将来実用化すれば、CO2の排出の低減に有効であり、大きな期待が持たれています。今後、この研究を発展させていく計画です。

光メタン生成技術の開発

 当社では、持続型炭素循環システムの構築に向けて、生産操業を終えた枯渇油ガス田、およびCO2の有効利用を同時に実現する技術の開発を目指しています。2008年度より東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンターと社会連携講座「持続型炭素循環システム工学」を開設し、枯渇油ガス田などの地下に生息する微生物を用いたメタン生成技術の開発にかかわる研究を進めています。微生物を用いたメタン生成技術とは、地下に生息している「水素生成菌」を利用して枯渇後の地下油層内に取り残された原油を分解し、水素を生成させたうえで、地下に圧入貯留したCO2と、地下に生息している「メタン生成菌」の作用によりメタンを生成する技術です。この技術によりCO2からメタンが生成され、燃料として使用できることから、炭素を持続的に循環させる仕組みの構築が期待されます。

 すでに当社の操業油田である八橋油田(秋田県)や新堀油田(山形県)において実施した地下微生物調査により、地下油層内においてメタン生成に深く関与する水素生成菌、メタン生成菌の存在が確認されています。これらの微生物を用い、実際の油層に近い高温高圧条件下でCO2を添加することにより、実験室レベルでのメタン生成に成功しています。また、一連のメタン生成実験から、微生物による原油分解速度が、水素とCO2からメタンを生成する速度と比較し、極めて遅いこともわかってきており、今後は、水素供給源と考えられる原油の微生物による分解反応速度を促進させる手法の開発を進めるとともに、 メタン変換効率および変換速度のさらなる向上のために、原油利用以外の新たな水素供給手法についても検討を進めていく予定です。

メタン生成技術のイメージ図

豪州での植林活動

豪州南西部の植林地で生育したユーカリの木
豪州南西部の植林地で生育した
ユーカリの木

 当社グループでは、温室効果ガスオフセット策として植林プロジェクトの調査を行うべく、2008年より、豪州にて試験植林を行っています。豪州南西部の645haの土地に植林を行った約140万本のユーカリの木は、現在順調に生育しており、大きいものでは4mまで成長しています。この試験植林では、今後50年間で、光合成により約45万トンのCO2の吸収が見込まれています。これまでの試験植林の結果に基づき、今後の豪州での温室効果ガス削減対策の一つとしてさらに規模を広げた植林プロジェクトを行うことも視野に入れ、検討していく予定です。

サバンナの火災管理

 当社グループが出資を行うDarwin LNG Pty Ltd.では、土地の先住民所有者であるNorthern Land Councilと北部準州政府と共同でWest Arnhem Land火災管理プロジェクトを行っています。同プロジェクトは、Darwin LNG 社の温室効果ガスオフセット策として実施しており、豪州北部準州内のWest Arnhem Land 2万8,000 km²を用い、先住民による火災管理を行っています。2006年に開始した同プロジェクトでは、乾季の初期に計画的な野焼きを行うことにより、乾季後期における大規模な山火事や生態系への影響を軽減しており、その効果は年間10万トン超に及ぶCO2の削減に値します。同プロジェクトのこれまでの成果に基づき、当社では、豪州で計画を進めているイクシスプロジェクトにおいても、温室効果ガスオフセット策として同様の火災管理プログラムの実施を検討しています。

天然ガスの普及・促進を通じ環境負荷低減に貢献

環境負荷の少ない天然ガス

 天然ガスは燃焼時の発生熱量あたりのCO2排出量が石油の75%、石炭の60%であり、化石燃料の中で最も高い環境優位性を持つエネルギーです。

 当社が保有する国内ガスパイプラインネットワーク沿線の供給先でも、ここ数年、石油系燃料から天然ガスに転換する動きが加速しています。例えば、工場等で使用されるボイラーの燃料を、重油から天然ガスに転換することで、CO2排出量を大幅に削減しています。当社でも、ガス生産プラントにて、天然ガスを使った省エネルギーシステムを導入するなど、天然ガスを積極的に利用しています。

 世界の天然ガス埋蔵量の合計は200年分程度あると言われており、我が国において、温室効果ガスの削減とエネルギーの安定供給を両立するために、天然ガスの利用拡大は欠かせないと考えています。

 当社は日本国内では南長岡ガス田を中心に天然ガスを生産しているほか、オーストラリアやインドネシアでも大規模なLNGプロジェクトの開発を進めています。天然ガスを開発・生産し、LNG受入基地やパイプラインネットワークの整備を進めることで、より多くのお客さまに安定的に天然ガスをお届けし、広く利用していただくことが、当社の気候変動対策の一つの柱です。

化石燃料の燃料使用に伴うCO2排出量比較(石炭=100とした場合)

生産・供給体制の増強

 当社の国内主力ガス田である南長岡ガス田(新潟県長岡市)は、1984年に越路原プラントの操業を開始して以来、年々拡大する天然ガス需要に対応するため、生産能力の増強を図ってきました。1994年には第2のプラントとなる親沢プラントの操業を開始し、それ以降も各プラントの生産能力を順次拡大することにより、現在では標準的な家庭の約500万世帯分に相当する、合計日量500万Nm³を超える生産能力となっています。

 また、当社では供給ガス原料の多様化にも取り組んでおり、2010年には静岡ガスから輸入LNGを原料とするガスを受け入れています。さらに、2014年に予定している新潟県直江津港における直江津LNG受入基地の運用開始により、当社の天然ガス供給源は、国産の天然ガスに加え、日本海側および太平洋側からの輸入LNG原料の天然ガスが追加されることとなり、天然ガスの供給体制は盤石なものとなります。

パイプラインネットワークの拡充

 当社では国内の長距離高圧天然ガス輸送パイプラインの先駆けとなる東京ライン(新潟県―東京都)を1962年に運用開始して以来、パイプラインの延伸・増強工事を継続的に行い、現在までに日本海側から太平洋側までを結ぶ総延長約1,400kmのパイプラインネットワークを構築してきました。

 今後は、新東京ライン第Ⅳ期(群馬県富岡市~群馬県藤岡市間、2012年開通予定)の整備による関東方面への輸送能力の拡充に加え、2011年5月には、新潟県糸魚川市から富山県富山市までの約102kmの天然ガス輸送パイプライン「富山ライン」の建設を決定しました。この富山ラインは現在建設中の直江津LNG受入基地から、富山県内の都市ガス事業者様やライン沿線の大口需要者の皆さまに、天然ガスを安定的かつ効率的に供給する幹線パイプラインであり、2014年末の供給開始を目指します。当社は天然ガスのより一層の普及促進を通じて環境負荷低減に貢献していきます。

パイプラインの維持管理を徹底

 総延長1,400kmを超えるパイプラインを、常に健全な状態に保つことは、天然ガスを安全かつ安定的に供給するという使命を果たすための重要な責務です。そのため国内事業では、当社グループの帝石パイプラインが週2回以上のパトロールにより安全を確認するとともに、漏洩検査・防食検査などを定期的に実施し、パイプラインの健全性を確認しています。その他、基準(日量140㎜)以上の降雨が確認された場合や震度4以上の地震発生時には、緊急パトロールを実施し状況の確認を行っています。

 2011年3月には東日本大震災の発生を受け、緊急パトロールを実施し、パイプラインに異常がないことを確認しました。

 また、パイプライン関連工事のコントラクターが行う工事での事故を防ぐため、工事に臨む関係者会員に対し現場に即した注意事項や掘削現場における類似災害事例を説明するほか、トラブル事例集を活用するなどして、安全管理の徹底を図っています。

 さらに、パイプライン関連工事のコントラクターを対象にコントラクターHSE管理マニュアルをもとに、すべての工事に対し、考えられるリスクを洗い出しアセスメントを実施するとともに、単独あるいは共同でHSE監査および安全パトロールを行い、リスク対策とHSE計画書により合意した内容が、遵守されている状況を確認し、安全のレベルを常に維持できる体制を整えています。

パイプライン地図

天然ガスの製品管理

 地下から産出する天然ガスのなかには、パイプラインによる輸送やガスコンロなどの消費機器に対して影響をおよぼす成分(水分やCO2など)が含まれているため、処理プラントにて分離した上で安全に輸送・販売しています。

 また販売ガスに関して、PRTR法および労働安全衛生法における対象物質の分析調査を実施し、安全使用についての情報を網羅したMSDS※を整備し、販売先に配布しています。

※MSDS:化学物質等安全データシート。特定の化学物質を含む製品を安全に  取り扱うために必要な情報を記載。

天然ガスを地下貯蔵

 枯渇した油・ガス田に圧入して貯蔵する地下貯蔵は、人工構造物を使った貯蔵に比べ、シンプルな設備で長期貯蔵が可能であり、季節による需要変動への対応などの多くの利点があります。

 当社国内事業では、1968年7月より、関原ガス田(新潟県長岡市)に天然ガスを地下貯蔵し運用しています。2010年度には、需要ピーク時対応で年間約2,900万Nm³の供給を行い、天然ガスの安定供給に活用しました。

 需要が緩和している期間に圧入を行って備蓄に努めており、2011年3月時点での地下貯蔵量は約2億1,000万Nm³となっています。

 天然ガスは、一般家庭用など極めて公共性の高い用途に広く使用され、安定的な供給が求められているため、地下貯蔵は安定的で柔軟性の高い供給の実現に重要な役割を果たしています。

朝日工業株式会社 生産管理部
吉原 清午様
お客さまの声天然ガス導入で環境・作業効率向上を実感
 当工場では鉄鋼棒鋼製品と肥料を製造しており、圧延加熱炉や肥料の乾燥工程などで多量の重油を消費していましたが、2010年から天然ガスのパイプライン供給に変更しました。この変更により重油使用時で必要だったローリー受付・タンク保守・在庫管理などが不要となり、業務の効率化に寄与しています。また、工場のCO2排出量も2010年度は2009年度比で約6,500トン削減することができ環境面でも効果が出ています。今後も天然ガスへのシフトを積極的に推進していきます。
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